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リアレーダーを実際に自転車の安全に役立てる

リアレーダーを実際に自転車の安全に役立てる

自転車は無防備な乗り物です。他の乗り物のように車体や防具に守られているわけではないので、事故に遭えば必ず自分が痛い思いをすることになります。

だからこそ、「事故を未然に回避する」ということが特に重要です。事故を未然に回避し安全に走行するための第一歩として、危険を認識する必要があります。直接見たり聞いたりすることができる危険は認識することが容易です。しかし、直接見ることができない後方の危険は認識することが困難です。

リアレーダーは自転車で道路を走行する際に後方の危険を認識しやすくするデバイスです。リアレーダーを安全に役立てるためには、製品の仕組みや性質を理解して正しく使う必要があります。本記事では、前半では簡単な原理と機能の紹介、後半では社員によるリアレーダーにまつわるエッセイを紹介します。


リアレーダーとはどんなもの?

リアレーダー(バイクレーダー、リアビューレーダー)は、後方から接近する車両をレーダーを使用して検知し、サイクルコンピューターのアラート音や画面表示などの分かりやすい形でライダーに危険を通知するデバイスです。

リアレーダーは現在広く使われているANT+の中で、「ANT+ Bike Radar」という規格として定められているものです。Magene L508 レーダーテールライトや、Garmin Varia リアビューレーダーなどがANT+ Bike Radar規格に対応しています。

リアレーダーに対応するサイクルコンピューターであれば、規格に定められた同様の機能を使用することが可能です(通知方法などは表示側のデバイスによって異なります)。

左: Magene L508、右: Garmin Varia RCT715(カメラ有)

リアレーダーの原理

リアレーダーは、自動車の先進運転支援システム(ADAS)にも使われるミリ波レーダーを使用しています。ミリ波とは波長がミリメートル単位の波長が短い電波です。波長が短い電波は、曲がらずにまっすぐ進み、物に当たるとその場で反射するという性質があります。ミリ波レーダーはミリ波の直進性が高いという性質を利用し、電波を対象物に向けて発信し、対象物に反射して返ってきた電波を受信して計算を行うことで対象物の距離や速度の情報を得ています。

リアレーダーは接近する物体だけを検知します。道路上には車両の他にも歩行者や建物、看板などさまざまな物体が存在しますが、このうち接近してくる物体だけを対象とすることで、車両のみを検知しています。

リアレーダーの利点

リアレーダーは電波を使用して接近する車両を検知します。そのため、雨や霧によって視界が悪く、目で見て確認することが難しい場面や、風切り音によって走行音で車両の接近に気付くのが難しい場面でも後方から接近する車両に気付くことができます。

レーダーの電波は遠く、幅広く届くため、目や耳よりも早い段階で接近する車両を検知することができます。例として、自転車が30km/h、自動車が60km/hで走行している場面を想定してみます。このとき、自転車は自動車に追い抜かれる約16.8秒前にその存在に気付くことができることになります。

また、レーダーの電波は真正面だけでなく、縦横方向に広がった形で照射しています。そのため、画像のように折れ曲がっていて見通しが悪い道路でも、早い段階で後方の車両の接近に気が付くことができます。

取り付け上の注意

先ほど紹介したようなレーダーを使用する原理から、リアレーダーを正しく動作させるためには、取り付けの際にいくつかの点に注意する必要があります。

地面に対して水平に高い位置に取り付ける

レーダーが発信する電波は真っ直ぐ進みます。車両が接近してくる後方に向けて出来るだけ遠くまで電波が届くように、リアレーダー本体が地面に対して水平になるように自転車の高い位置に取り付けてください。

動かないように自転車にしっかり固定する

リアレーダーは移動する自転車に取り付けた状態で、後方から近づいてくる車両を検知します。リアレーダー自体が動いてしまうと近づいてくる車両を正しく検知できなくなるため、自転車の上で動かないようにしっかり固定してください。

レーダー照射部前方を障害物が遮らないようにする

リアレーダーは本体正面のレーダー照射部から目に見えない直進性の高い電波を発信し、対象物に反射してきた電波を受け取ることで近づいてくる車両を検知します。電波の直進方向を妨げてしまうと正しく検知ができなくなるため、レーダー照射部前方をタイヤや泥除け、キャリアなどの障害物が遮らないように取り付けてください。

画面表示による通知

リアレーダーをサイクルコンピューターに接続して、実際に走行する際の動作を見てみましょう。なお、画面の表示、アラート音などの動作はお使いの機器によって異なります。本記事ではGarmin Edge 530を使用しています。

リアレーダーを接続すると、サイクルコンピューターの画面にバー状の表示が追加されます。この表示は、下図のように自分(自転車)と後方から接近してくる車両の位置を表しています。これによって、接近してくる車両の数・位置・速さを知ることができ、後方の状況をまるで自分を空から見下ろしているかのように把握することができます。

下図のように画面端に色が付いている表示は危険のレベルを示しています。この色を見ることで、画面を凝視しなくても、一瞬画面を見るだけで自分に迫った危険を知ることができます。三段階のレベルが存在しており、それぞれの意味は以下のようになっています。

  • 表示なし: 接近中の車両なし
  • 緑: 車両通過後
  • 黄: 車両接近中
  • 赤: 車両急接近中

赤と黄の違いは接近する車両の相対速度の大小です。車両の距離や絶対速度ではないため、例えば車両の流れが高速な幹線道路を走っていれば、つねにレベルは赤になりますし、自転車と車両が近い速度で走っている道路では、リアレーダーが車両を検知してから追い抜かれる瞬間まで黄色のままとなります。

アラート音による通知

画面表示とともにサイクルコンピューターのアラート音でも車両の接近を通知します。このアラート音を聞くことで、前方から目を離すことなく、音を聞くだけで後方の車両の接近に気付くことができます。この音は、他の通知音とは異なる独特の音になっています。

アラート音によって接近する車両がある時に、追い抜かれる前に耳だけで危険を知ることができます。アラート音は画面上の表示のレベルが「表示なし」または「緑」の状態から、「黄」または「赤」に変わったタイミングで鳴ります。

車両が自分を追い抜いたり、停止・交差点で曲がる等して接近をやめたり、一旦危険が回避されるとアラート音は停止します。危険が回避されたあと、車両の接近が検知されて再び危険な状況になるとアラート音が鳴ります。

リアレーダーを使用して実際に走行する際は、主にアラート音による通知で後方から接近してくる車両に気付き、必要に応じて画面表示を見るといった感じで、画面表示とアラート音の通知の両方を併用して後方の状況を確認することになります。

使用上注意が必要な場面

交通量が多い道路で使用する場合は注意が必要です。アラート音は車両の接近を検知した時点で鳴ります。絶えず接近する車両がある場合は鳴り続けることになるため通知が多くなりすぎ、アラート音によって実際に追い抜かれるタイミングが分からない状態になります。

このような時は、アラート音による通知を頼らず、従来通りの走行音を聞く方法と、リアレーダーによる画面表示を併用することをおすすめします。バーの表示によって、走行音のみでは分からない後方の車両の位置や距離などを把握することが可能です。

複数車線の道路での使用も注意が必要です。リアレーダーは横方向の走行位置に関係なく後方から接近してくる車両を検知するため、自転車から離れた車線を走行する車両も検知します。この特性は車両との速度差が非常に大きい場面などでは有用ですが、2車線以上の道路では後方の状況を正確に把握することができなくなります。これにより、交通量が多い道路と同様の通知が多くなりすぎる問題が発生します。

例えば、以下の画像右側の2通りの状況は、画面表示上はどちらも同じ表示となります。

このような時も、リアレーダーを頼りすぎず、従来通りの目と耳を聞く方法に加え、後方の車両の量などの目安としてリアレーダーの画面表示を使用して走行することをおすすめします。

まとめ: 仕組みや性質を理解して安全に役立てよう

リアレーダーはレーダーという自転車においては新しい技術を使用した製品です。そのため、特有の性質や使用方法が存在します。本記事を参考にリアレーダーの仕組みや性質を理解して、あなたが実際に自転車に乗る際の安全に役立てていただければ幸いです。


以下はグロータックが取り扱いを行う、Magene L508を使用した社員・尾島によるエッセイをお届けします。

エッセイ: 安全にめざめて、リアレーダーを使ってみて

自分がこの製品で一番期待していたのは、毎日の通勤で役に立つかという点だった。自分は東京都内の片側2車線以上の大きな道路を通って通勤している。休日に川沿いのサイクリングロードを走ったり、交通量の少ない郊外へロングライドをしたりもあるが、毎日の通勤の場面で一番高い頻度で感じている危険を軽減することが一番期待していることだった。

この期待に対しての自分の結論は以下の通りである。

  • リアレーダーは後方の注意を任せるためのものではない
  • 自分の場合は振りむいて確認することが増えたが、後方の情報が増えたことで安心感は増した
  • リアレーダーだけで「注意を完結」できる場面は存在する
  • 通勤でいつも同じ道を通る場合、いつも通る道だからこそリアレーダーを有効に活用できる

ここからは、自分が「安全」ということを意識したきっかけ、いくつかの方法を試したうえでリアレーダーを使ってみて感じたことを書いていく。

きっかけは去年に遭った事故

自分自身がリアレーダーに関心を持ったきっかけは去年に遭遇した事故だった。

自分は東京都内の片側2車線以上の大きな道路を通って通勤している。事故に遭ったのは風の強い日だった。目の前の路上駐車のトラックを右車線へ避けようと後方を振りむいて確認したところ、丁度同じ動きをした乗用車が追い越そうとしていた。その動きに気をとられ、自分はトラックのすぐそばを通過しようとしてしまった。その瞬間にトラックの荷台のカバーがなびき、ドロップハンドルに引っ掛かって落車した。

幸い、相手がおらず物損もない単独事故だった。自転車は消耗品が損傷した程度で、一番の被害は腕の擦過傷くらいの事故だった。物理的な被害は小さかったが、一番大きかったのは心のショックだったと思う。

今までそこそこ長く自転車に乗ってきて、一時期は競技としてトライアスロンをやっていたが、一度も大きな事故はしたことがなかった。その自負が傷ついたことに加えて、やはり自転車通勤中に事故に遭うという社会人の責任的な部分(さらに、このような会社に勤めていることもあり…)で心にショックを受けたのだと思う。

元々ビビりな性格ゆえ、無茶はしない走り方をしていたと思う。(この事故はそれゆえに瞬時に危険を回避するためのアクションを取れなかったために起きた面が大きいと思う)が、自分はこの事故をきっかけに、以前よりも自転車走行時の安全に対して関心が高まり、安全に対して出来る限りの努力をしようと思うようになった。

バックミラーを試すも、使わなくなる

最初に試したのは、ドロップハンドルのバーエンドに取り付けるタイプのバックミラーだった。結局これは見にくいと感じて、後ろを振りむいて確認した方が安心だと感じたため使用をやめてしまった。

ドロップハンドルに取り付けるバックミラーは面積が小さく、また、自動車やオートバイのように取付位置が外側に張り出していないため、それらのように視界が良くない。バックミラーを確認したとしても、見にくい視界ではいまいち信頼できないため安心できず、結局振りむいて確認することになってしまう。そう感じて自分はバックミラーを使用しなくなってしまった。

「余裕を持つこと」が安全のために必要だと気が付く

その次に試したのは、乗る自転車を変えることだった。今まで乗っていたのはハンドルが低い25cタイヤのロードバイクだったが、ハンドルが高めの32cタイヤのグラベルバイクに通勤用バイクを乗り換えた。

結論から言ってこれは正解だった。ポジションの変化とタイヤの太さのおかげで視界が良くなり、車体が安定した。それによって物理的、心理的な余裕が生まれたことで受動的な安心感が高まっただけでなく、安全に走行するためのアクションをよりしっかりと取れるようになったことで、能動的な安心感も高めることができた。具体的に言うと、以前よりも自己主張を大きくしたり、堂々と道路を走行できるようになった。

ここから分かったのは、自分にとって安全に走行するためにまず必要だったのは、「余裕を持つこと」だったということだ。余裕を持って走れていれば、周りに存在する危険をより多く、より早く気が付くことができる。早く気が付くことができるということは、危険が小さいうちに回避するための具体的な動きを取ることができる。それが出来れば心強く走れるようになるし、実際に危険に遭遇しなくなる。それが自分が事故に遭ったのをきっかけに気付いたことだった。

リアレーダーを使うことで、後ろを振りむくことが増えた

そして、その次に試したのがリアレーダーだった。事故以来、様々な安全対策を試してきた中で、使用前から興味は持っていた。そんな中、ちょうどこのタイミングでMagene L508を使用する機会に恵まれた。

使用前、自分はその特性をよく理解していなかったこともあり、リアレーダーは後方の不安が全て無くなるような魔法のデバイスであるという期待をしていたように思う。ある程度使用した今になって思うのは、リアレーダーはあくまで道具であり、使い方次第で役に立たせるのは自分であるということだ。

リアレーダーを使うことで後方の注意を完全に任せられるということは当然なく、使っていても状況に応じて頻繁に後ろを振りむいている。むしろ、リアレーダーを使うことで、使う前よりも後ろを振りむくことが増えたかもしれない。前もって車両が接近していることを知っているため、振りむく時間の余裕があるのだと思う。そのため振りむく回数は増えたが、落ち着いてしっかり後方を確認ができるのでむしろ安心感に繋がっている。

この安心感は、危険が多いかつ不足しがちだった、後方の情報を増やすことができたためではないかと思う。自転車は前を向いた状態で前に進むので、後方の情報は必ず不足しがちになる。また、自転車は道路上において自動車やオートバイなどの他の車両よりも遅い。そのため、つねに追い抜かされる危険に晒されて走行することになる。後方の情報は多いに越したことはなく、複数の方法で確実に確認したほうが安心だと感じる。

後方の注意、リアレーダーに「任せられないけど、完結できることもある」

また、リアレーダーに後方の注意を任せられるわけではないが、「リアレーダーのみで後方の注意を完結できる」場面は実際の走行の中では多いことが分かった。例えば走行中、左折しようとしている自動車がいたとする。後方に車両が居なければ右側に大きく避ければいいが、車両が居る場合は、一度停車して左折が完了するのを待つしかない。

リアレーダーがあれば、後方に接近している車両があるかを常に把握した状態で走行することができる。そのため、それ以上の確認をするまでもなく、車両があることを確認した時点で停車するという判断をすることができる。早い段階で判断できることで、停車するのに安全な場所を見つけたり、停車する前に後方の安全を確認したりする時間の余裕が生まれる。

これは一例に過ぎないが、リアレーダーがあることで注意を早い段階で完結でき、それにより生まれる時間的な余裕によって安心感を感じることができる場面は通勤中にも多いことが分かった。

リアレーダーは走り慣れた道でこそ役に立つ

実を言うと、自分の通勤ルートにおいては、当初リアレーダーはあまり役に立たないと感じていた。事実として、ルート中に多い片側2車線以上の区間では、交通量が多い時には鳴りっぱなしになってしまう。そのために結局今まで通り後ろを振りむいているので、使う前と使ったあとで、実際自分がやることは変わっていないのではないかと思ったためだ。

しかし、使い続けていくことで、鳴りっぱなしになってしまう場面では画面表示を見るなど、リアレーダーの使い方を理解することで、有用と感じる場面を増やすことができた。

また、いつも特に気を使って行っている安全確認をする中で、いつの間にか自然とリアレーダーを利用する動作が組み込まれていることに気が付いた。

例えば、自分の通勤ルートの中に、片側三車線の道路からいちど単車線の合流路を通り、再び片側三車線の道路に合流するという注意が必要な区間がある。今までここでは前後の状況を忙しく振りむいて確認していたのだが、使い続けていくうちに後方の確認はリアレーダーである程度済ませて前方の確認に集中できるようになった。それによって、より前方に注意が向けられるようになっただけでなく、忙しさが軽減されて余裕をもって走れるようになった。

通勤のように繰り返し通る道では注意すべきポイントが頭に入っているので、リアレーダーをより有効に活用できるようになる。リアレーダーは初めての道でも役に立つものだが、走り慣れた道だからこそ役に立っていると感じている。

おわりに: リアレーダーを使用することで起きた自分の変化

ここまで数か月、主に通勤、時々郊外のロングライドでリアレーダーを使用してきた。自分は敢えて通勤ルートを時々使用しないで走行してみることにしているのだが、その時に気がつくことがあった。

それは、一度リアレーダーを使用したことで、使用していなかった以前よりも余裕を持って走行できるようになったという感覚である。これはおそらく、一定期間使用して走行したことで、広い視野を持って余裕を持って走行する経験ができ、どこに注意を向けて走行するべきなのかという、「注意力の配分」と言うべき能力が向上したのではないかと思う。

リアレーダーを使用してきて、自分がこのデバイスの使い方に適合するだけでなく、自分自身の走り方まで変化が起きた。リアレーダーを使用しても、結局自転車を運転するのは自分自身である。だから自分自身に変化が起きない限り、安全になったとは言えないと思うが、自分の場合は変化が起きた。だから自分は、リアレーダーを使用して安全になったと思うし、これからも使い続けたいと思う。


本記事で紹介しているMagene L508の詳細については以下のリンクをご覧ください。

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