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連載・コントロールレバー:①自転車における変速の歴史

連載・コントロールレバー:①自転車における変速の歴史

皆さん、こんにちは。
日々のサイクルライフ、いかがお過ごしでしょうか。

さて、この度はEQUALのコントロールレバーが遂に発売となりました。
時間がかかった分、自信をもって皆さんへお勧めできる製品となっております。

しかしながら、皆さんの中には、コントロールレバーの商品説明を見ても

「結局のところ、何がすごいのかよくわからないんだけど?」

と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この疑問にお答えするためには、いくつかのステップに分けて説明する事が必要不可欠です。
(商品説明ページで述べるには、あまりにも長くなってしまいます。)

そこで、コントロールレバーを取り巻く様々なお話を、連載コラムという形で皆様にお届けしたいと思います!
「なるほど、そうだったのか!」と納得をされて、コントロールレバー導入のきっかけとなれば幸いです。

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「変速」とは何か

さて、今回は連載第1回として、変速機の仕組みを、その歴史と共にお伝えします。
尺の都合上、かいつまんだ内容になりますので、ご興味を持った方はご自身で詳しく調べてみてくださいね。

自転車の駆動部分イメージ


そもそも自転車における変速とは、自転車の速度を加速・減速させるために前ギヤ(チェーンホイール)と後ギヤ(スプロケット)からなるギヤ比(クランク1回転あたりのホイール回転比率)を変える事です。

例えば、前ギヤの歯数が50t、後ギヤの歯数が25tのとき、ギヤ比は 50/25=2.0 となり、ホイールがちょうど2回転する事になります。

前ギヤを大きくするか、後ギヤを小さくすればスピードが出る分ギヤ比が大きく(ギヤが重く)なり、当然その逆であれば、スピードが出せなくなってギヤ比は小さく(軽く)なりますね。

ダブルコグの固定ギヤホイール

変速で主流だったのは、ダブルコグのホイールを使う事でした。

これは、後輪のハブの両側に歯数の違うスプロケットを備え、変速時にはホイールをひっくり返してギヤ比を変える、という仕組みです。

現在でも、トラック競技用バイクやピストバイクで使われていますね。

ただし、この変速方法の欠点は一旦停止し、工具でホイールを外す必要がありました。
当然、走行中には変速できません。

革新

ところで、19世紀後半から20世紀初頭、自転車ホイール用のフリーボディが開発されました。

フリーボディの説明は必要ないかと思いますが、前方向にペダリングしている時は動力を伝え、そうでない時は動力を伝えず、ホイールを空転させる仕組みです。

つまり、脚を止めている時もホイールが回り続けるようになりました。

現代の自転車には欠かせない機構ですが、この機構が変速システムにおいて革新をもたらしました。

変速機は外装式・内装式それぞれが登場しますが、代表作を強いて挙げるとするならば、カンパニョーロ社の開発した外装式変速機のコルサではないかと考えます。
コルサと共に開発されたクイックリリースは、レバーの動作でホイールを瞬時に解除・締結できるものであり、今日においても自転車のみならず、多くの製品に用いられています。

Campagnolo Corsa / コルサ
カンパニョーロ創設者のトゥーリオ・カンパニョーロが考案した変速機構。現在とは違い、シートチューブに沿わせた2本のレバーで変速を行っていた。2本のレバーの役割は、「ホイールのロック解除/締め込み」と「変速機の左右移動」の制御。変速の際には、①クイックリリースでホイールを開放し、②変速レバーを回してチェーンガイドを動かし、③クランクを逆回転させてチェーンを移動させ、④クイックリリースを締め直す、といった複雑な動きが必要だった。当時のフレームはスライド式のリアエンドが使われているものがあり、ホイールを開放する事で走行中でもチェーンテンションを保つことができた。変速動作の前後にクイックの開け閉めを行うのはこのため。ところで、カンパニョーロがクイックリリースを開発したメーカーであることは有名な話で、今でもロゴマークにクイックリリースがデザインされている。

発売年:1945年~1955年頃
引用元:Derailleurs of the World Campagnolo編 | CAMBIO工房

もしもフリーホイールがなく、固定ギヤのバイクでディレイラーを動かそうとした場合、変速によってケイデンスが急変して大きくバランスを崩したり、スプロケットが破損したり、ひいては重大なトラブルに繋がりかねません。

つまり、自転車におけるフリーホイールとは、単に脚を止めていられるお陰で乗り手が楽になるだけでなく、変速機において欠かせない要素なのだと言う事がおわかりでしょうか。

1948年カンパニョーロ インストラクションシート
変速機のあるダウンチューブに手を伸ばしている写真がある。変速機は当時からレース以外に軽快車でも使われていた。

引用元:Derailleurs of the World Campagnolo編 | CAMBIO工房


ところで、前述したフリーホイールの「前方向には力を受け止め、逆方向には力を受け流す」といった特性はクラッチ機構であると言えます。
このクラッチも、コントロールレバーを語る上で欠かせない要素なのですが、このクラッチに関してはまたの機会に紹介したいと思います。


開発の加速

さて、第二次世界大戦の前後になると、多くのメーカーで変速機の開発が進みます。
この頃から、変速機の外見や仕組みが現在の形に大きく近づいていきました。

SIMPLEX(サンプレックス) GRAND TOURISME / グランツーリズム
3、4速に対応したディレイラー。プーリーアームの根元にスライドシャフトとリターンスプリングが入っている。アーム根元のフックをBB付近から長いスプリングで引くことでチェーンのテンションを保っていた。

製造年:1947年~1954年
引用元:Derailleurs of the World SIMPLEX編 | CAMBIO工房

ディレイラーを操作するシフターについては所謂ダブルレバーと呼ばれるような、ダウンチューブに取り付ける小型のレバーが登場して以来、それが長く定番となりました。(他にも、バーエンドタイプやフラットバータイプなどもありましたが、ダウンチューブシフターのシェアには及びませんでした。)

SHIMANO DURA-ACE / デュラエース(1型)
デュラエースシリーズ初のアルミ製シフトレバー。フリクション式変速。レバー緩み止め機構が付いている。ダブル用のみで直付け台座はシマノ専用。デビュー初期に「ジュラエース」の表記があったが、後にすべて「デュラエース」に統一された。

発売年:1972年~1978年
引用元:Derailleurs of the World SHIMANO編 | CAMBIO工房

その後、変速機はブレーキを握りながらでも操作できるようになったり、更には電動化したりと、更なる目覚ましい進化を遂げた事は言うまでもありません。

SHIMANO POSITRON / ポジトロン
変速機本体に位置決め機構を搭載し、2本のケーブルを引いて操作をする「PULL・PULL」方式を採用。
リアディレイラーの使い勝手を飛躍的に高めた初代モデル。後のSIS(SHIMANO INDEX SYSTEM)の原型となった。

発売年:1974年~1977年
引用元:Derailleurs of the World SHIMANO編 | CAMBIO工房

ところで、Wレバーに代表される当時の変速は無段階で動くフリクション式でした。
つまり、乗り手はディレイラーを正確な位置に移動させる為に繊細な操作が必要で、専ら熟練した乗り手の勘に頼っていたのです。
変速技術の差が、レースの成績の差に直結していたとも言われていました。
それ故に、不慣れな初心者には非常に扱いにくいものでした。

このようなフリクション式変速が普及した背景には、シフター・フロントディレイラー・リアディレイラーが必ずしも同一のメーカーのもので組まれていた訳ではなかった事が挙げられます。

そのような事情において、ディレイラーの動作範囲を乗り手自身でコントールできるようなフリクション式は、都合が良かったのです。

EQUALのコントロールレバーも、フリクション式を採用しています。
つまり、かつてのWレバーと同様に、様々なメーカーやコンポーネントの変速機やレバーが別々に組まれていても、ちゃんと使う事ができる、という訳です。


今回のお話はここまでです。
次回はインデックス式変速の違いとフリクション式変速の違いを皆さんと勉強し、そして、EQUALコントロールレバーの仕組みにもいよいよ触れていきたいと思います。どうぞご期待ください!

(続く)

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