EQUALコントロールレバー最大の特徴は、メーカーやグループセットの枠を超えたパーツの組み合わせが可能である点です。
このことについては、これまで何度もお話ししてきました。
しかし、一体どの程度まで自由な組み合わせが可能になのか、といったポテンシャルについて気になる方もいることでしょう。
ステップレス変速のコントロールレバーを取り付ける事で、フロントディレイラー・リアディレイラーのコントロールが可能になります。
しかし、チェーンやスプロケット、チェーンリングなどの選択には注意が必要です。
そこで今回は、EQUAL コントロールレバーを使って、メーカーやグループセットが異なるコンポーネントを組み合わせる際に注意すべき点を見ていきたいと思います。
※第6回を先にご覧下さい。
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グループセットはどの程度逸脱する事ができるか
まず大前提として、純粋な性能を追求する場合、EQUAL コントロールレバー以外を同一のメーカー、同一のグループセットでまとめるのが最適です。
スプロケットとチェーンには、スムーズな変速動作を実現するための工夫が施されています。しかしこれらは、段数が異なったり、異なるメーカーやグループセットとの組み合わせは考慮されていません。
したがって、グループセットを逸脱すると、変速性能が低下する可能性があります。
しかし、その性能低下が許容できる範囲内であれば、組み合わせて使用することもできるでしょう(勿論、この許容範囲は人によって異なります)。
ただし、安全面で問題ないことは絶対条件として、組み合わせを考慮する必要があります。
では具体的に、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
今回は同一メーカーで、段数が異なるグループセットを組み合わせるパターンを例に考えます。
スプロケット
バイクの変速段数を増減させるには、スプロケットの交換が欠かせません。
チェーンリングやスプロケットは、メーカーやグループセット、変速段数によってギアの間隔が異なります。
スプロケットを収めるスペースは限られているため、基本的には段数が増えるほど歯が薄く、ピッチも狭まっていく傾向にあります。
(例外的に段数が変わっても、歯の厚みやスプロケットの間隔が同一になるような製品も存在します。)
チェーンリング
チェーンリングもスプロケットと同様に、変速段数によって歯の厚みが異なります。
チェーンがチェーンリングの歯にきちんと嵌り、噛み合わさっていなくては、歯飛びやチェーン落ちが発生しやすかったり、不意に変速してしまうなどのトラブルの原因になります。
他にも、アウターとインナーの間隔やチェーンラインも段数によって異なるため、注意が必要です。
チェーン
チェーンの選択は難しいです。同じ対応段数のチェーンでも、メーカーが違えば形状や各部の寸法が異なるため、変速性能に大きく影響します。
基本的にはスプロケットと同じメーカー、同じグループセットのチェーンを使いましょう。
もしも、対応段数の異なるチェーンとスプロケットを組み合わせた場合、両隣のスプロケットに挟まれて噛み込みが発生するなど、トラブルの原因となります。
また、同一のメーカーで、対応段数の同じチェーンでも、規格が異なれば互換性はないので、予めよく確認しておく必要があります。
リアディレイラー
やはりリアディレイラーもチェーンとスプロケットなどとの関係と同様に、チェーンと接するガイドプーリー・テンションプーリーの歯がチェーンにきちんと収まっている必要があります。
プーリーの歯が通常より厚いと、やはりチェーンがプーリーから外れてしまう恐れがあります。
また、前回でも触れたとおり、キャパシティやスラント角などを守っていれば、変速動作は可能です。
結局、どの程度まで使えるのか
ここまで読んだ皆さんは、上記のような感想を抱かれたことでしょう。
明確にお答えするのが難しい問題になりますが、性能や安全面を考えると以下の条件を守る必要があるでしょう。
- スプロケット、チェーンリング、ガイドプーリー、テンションプーリーのそれぞれの歯が、チェーンの内側に入っていること。
- 上記の状態で、チェーンと各パーツの歯が密着せず、適切な隙間が確保されていること。
- スプロケットの段数から±1段程度のコンポーネントで揃えること。
グループセット外のパーツを取り入れる事は、様々な良し悪しが生じる場合もあるため、一つの挑戦であるといえます。
そのため、変化に対してどの程度寛容であるかが重要となりますが、それは個々人によって異なります。
例えば、リア11速のロードバイクに乗っている方がEQUALコントロールレバーを使って12速化を目指す場合、スプロケットとチェーンを変えるだけで満足する方もいれば、前後のディレイラーやチェーンリングも交換しなければならないと感じる方もいるでしょう。
特に重要なのはチェーンです。チェーンは変速性能に大きな影響を与え、スプロケットとの噛み込みなど、トラブルのリスクが高いパーツですので、基本的にはスプロケットと段数を揃えておきましょう。
自分が最もこだわりたいこと
「あのチェーンの色が好き」
「このディレイラーが気に入っている」
「クランクは絶対これじゃないとダメ」
こういったこだわりがあるのであれば、妥協する必要はありません。
皆さんには、自分のバイクを自由にカスタマイズできる権利があります。
拘りぬいた結果、多少性能に影響があったとしても、結果として自分のこだわりを実現させたバイクであるならば、それはあなたにとって何よりも価値があるバイクとなるでしょう。
ですので、色々なカスタマイズにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
思わぬ発見があるだけでなく、そういった発見をノウハウとしてユーザー間で共有できる事で、楽しみが広がるかもしれません。
コントロールレバーを使った実例
今回学んだ内容を踏まえ、コントロールレバーを利用したカスタマイズをひとつ紹介します。
ドライブトレインのスペック
以下の通りとなります。
- クランク:カンパニョーロ POTENZA 50-34T 11S
- フロントディレイラー:カンパニョーロ POTENZA 11S
- チェーン:シマノ 105 12S
- スプロケット:シマノ ULTEGRA 11-34T 12S
- リアディレイラー:カンパニョーロ RECORD 12S
メインコンポーネントはシマノとカンパニョーロ、特に変速性能に重要なチェーンとスプロケットはシマノを採用した。
こだわりポイント
カンパニョーロは本場イタリアのブランドとして、サイクリスト永遠の憧れです。
ですが、全てのコンポーネントを揃えるのは大変。
それに、肝心の変速性能はやっぱりシマノの方が良さそうで、悩みどころです。
そこで、カンパニョーロによる見た目のアピール性も、シマノによる変速性能も両立したい方へ向けたMIXコンポーネント構成のカスタマイズとなります!
目を引くクランクやディレイラーはカンパニョーロが担当。
そして変速の肝となるスプロケットとチェーンはシマノで統一。
また、フロント変速は11速対応、リヤとチェーンは12段変速対応と、対応するギヤの段数も混在していますが、EQUAL コントロールレバーによって問題なく使えています。
スタッフインプレッション
「機械式で12速のロードバイクに乗りたいけど、現行の105では物足りない。もう少しだけグレードアップしたい!」
こういった潜在需要は意外と多いのではないでしょうか。
そんな需要に応えるのが今回のカスタマイズになります!
フロント変速に関しては、カンパニョーロの11速コンポーネントのPOTENZAです。
シマノのリヤ12チェーンを使っていますが、駆動・変速共に問題ありません。
(カンパニョーロのクランクを取り付ける場合、専用のBBや工具が必要になりますのでご注意ください。)
見た目のカンパニョーロと、性能のシマノ。
両ブランドそれぞれの魅力を、一つのバイクに凝縮する事ができたカスタマイズになっています。
リア変速は、シマノの12速チェーン・スプロケットと、カンパニョーロのレコードが組み合わさります。
いずれも12速用コンポーネントである事は勿論、スプロケットもディレイラーの最大対応歯数に合わせているので、ローからトップまで変速がバッチリ決まります!
個人的には、カンパニョーロ・レコードのディレイラーが今では珍しいBテンション式を採用しているのもポイントです。
EQUALコントロールレバーによって、文字通り両ブランドの良いとこ取りが出来たバイクに仕上げる事ができました。
全てをカンパニョーロで統一するよりもコストを抑えつつ、変速の快適性も向上し、満足度の高い1台となりました!
まとめ
今回のおさらい
- EQUAL コントロールレバーを使った自由な組み合わせでは、同一のメーカーやグループセットで統一する事がベストな変速性能を発揮できる。
- やむを得ずメーカーやグループセットが混在する場合は、基準となるスプロケットの段数から±1段を目安に考える。ただしチェーンは基準となるものより太くならないようにする事。
- EQUALコントロールレバーを使って、シマノとカンパニョーロのミックスしたバイクを実現した。11速・12速のコンポーネントが混在しているものの、肝となるスプロケットとチェーンが同じシマノ12速で統一している事から、特に不満なく使えている。
前回に引き続き、EQUALコントロールレバーを快適に使う上で守るべき規定と、カスタマイズの実例を紹介しました。
弊社もメーカーである立場上、どの程度攻めたカスタムを紹介できるかについては難しいところですが、EQUALコントロールレバーを使っている時点で多少なりともグループセットの逸脱は免れません。
なので、安全かつ快適に使う上でのノウハウをお伝えしました。
今回取り上げた事項に注意すれば、EQUALコンセプトのように自分だけの、思い通りのバイクを作ることができるようになるでしょう。
(続く)