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元理学療法士の経験を生かした「カラダのサポート」。ACTIVIKE代表、西谷亮さんが行うロードバイクフィッティング【後編】

元理学療法士の経験を生かした「カラダのサポート」。ACTIVIKE代表、西谷亮さんが行うロードバイクフィッティング【後編】

「カラダに痛みが出てくる」「もう少し速く走りたい」
自転車を本格的に乗り始めると少しずつ見え始めてくる、走ることへの課題。
その課題は、バイクフィッティングで解決するかもしれません。

東京都三鷹駅から徒歩五分の場所に、バイクフィッティングを専門とする「ACTIVIKE」があります。
「実走での動きを見るためには、通常の固定ローラーではなく、前後左右に動くGT-Roller F3.2良い」というのは、ACTIVIKE代表のフィッター西谷亮さん。

元理学療法士という経験から、ポジション調整という枠を超えた「カラダのサポート」を行うACTIVIKEのフィッティングサービスについて伺いました。

後編はフィッティングの枠を超えた、ACTIVIKEのサービスや想いについてをお話いただきました。

ACTIVIKEのウェブサイトはこちら

前編 | 後編

◆ ◆ ◆

コロナ禍でもサイクリストのために。オンラインスタジオの運営

運営されているオンラインスタジオについて教えてください

西谷亮さん(以下、西谷):ビデオ通話とチャットを通じて身体のコンディショニングを継続的行える新しいサービスとして、ACTIVIKEではオンラインスタジオを開始しました。始めたキッカケとしては、やはりコロナ禍において外に乗りに行けないサイクリストが多いなか、何かお手伝いが出来ないかというところがキッカケでした。緊急事態宣言中はACTIVIKEの営業も自粛していましたし、みなさんの自宅で出来る内容での、身体を鍛えるトレーニングやコンディショニングの指導が出来ればと思いました。

以前からフィッティングを行っていて思っていたのは、ポジションだけでなくベースとしての体作りが足りていない方が結構いるということでした。楽しくロードバイクに乗るには、もう少し体作りをしたほうが良いということに気が付いてほしかったのですが、毎回ACTIVIKEに来てパーソナルトレーニングをするとなると、ハードルが高くなってしまうため、どうしようかと思っていまして。

そこで、新型コロナウィルスでの自粛期間の中で思いついたのがオンラインスタジオでした。皆さんのご自宅で出来るのであれば、ハードルは低くなりますし、ベースの身体作りであればウェイト等を使わず自重での基本的なトレーニングで十分な効果が期待できます。

体作りとフィッティングに関係性はございますか?

西谷:先ほど言った通り、フィッティングは身体と自転車と両面が重要です。その身体の部分であれば、自宅でも出来ることはたくさんありますし、ACTIVIKEに来なくても悩みを解決をしてあげるられることもあると思います。例えばロードバイクに乗っていて腰痛がある方で、ポジションの調整をしなくてもオンラインスタジオで指導させていただいたら腰痛が出なくなったという方もいますし、ヒルクライムのタイムが良くなったという人や、20分のパワーが上がったという人もいます。

ポジションだけではないんですね

西谷:やはり両方必要だと思います。体作りが完璧だからといって、ポジションがあっていないと痛みが出てしまう場合ももちろんあります。では、全てポジションで解決するかといえば、そもそもベースの体作りが出来ていない人は、いくらポジションを合わせても問題が解決しない場合もあります。悩みの原因がポジションではなく、そもそも身体にあるという方もあるわけです。

そういった意味でも、まずはベースの体作りが出来るのが理想です。そのベースというのはエアロフォームを常にとれるようなレベルではなく、普通にロードバイクに乗って走るだけフォームとしての体作りです。

普通にロードバイクを乗るだけでも厳しいくらいの方は結構いらっしゃいますか?

西谷:自転車をこれから始めるという方って、運動経験が全くゼロという方も少なくないんです。そういった方は筋力が足りないだけでなく、筋肉の動きもスムーズでない場合もあり、その状態で長距離長時間走ってれば、いつかは怪我してしまうだろうなと感じる部分も多いです。

そういった方を助けてあげられればと思いますし、気軽に頼っていただきたいと思っています。特にオンラインであれば住んでいる場所に関係なくご指導できるのも良い点ですね。オンラインスタジオで、より多くのサイクリストの悩み解決をお手伝いできればと思ってます。

身体の使い方を解説する西谷さん

より良いフィッティングのために製品開発。インソールの開発について

インソールの開発も行っていると聞きましたが、そちらに関してもお伺いできますか

西谷:インソール、いわゆるシューズの中敷きですが、足首の動きは全身の動きに影響するんです。足のアーチの部分がしっかり機能していないと、どんなにポジションを合わせても、上手く力が伝わらなかったり、膝の挙動が整わなかったりするケースがありまして、人に合わせてインソールのカスタムもやったりしていました。ただ、インソールをカスタムするとなると、ACTIVIKEに来ていただかないといけないですし、多くの方へ提供が出来ないという点がありました。

そもそも通常のインソールもスポーツ用には考えられて作られているのですが、自転車のペダリングには独特の足首の使い方をするので、実際にはあっていない場合があります。ペダリングに最適化された設計のインソールは多くないので、なんとかしたいと思いました。

そこで、カスタムするほどの個別性は無くなりますが、様々なサイクリストに合うペダリングに最適化されたインソールを開発できれば、よりたくさんのサイクリストのみなさまへ良いペダリングフィーリングを体験していただけると思い、自分の考えに近い設計をしていたインソールのメーカーさんにお声がけさせていただいて、共同で開発しています。

インソールも売って終わりではなく、そのインソールを使ってのペダリングの指導したり、製品の良い点悪い点のフィードバックを集めて製品の改良をしていくようなコミュニケーションが出来る、オンラインサポートの体制を作っていくつもりです。こういった製品は、使ってみないと分からないところがあるので、買っていただいたらそのままではなく、使った上での使用者個人の問題を解決の出来ることが重要だと思っています。

私が今履いているシューズは、某社のインソールが付属しているバージョンもあったのですが、試着して履き比べると違和感があって普通のインソールのものを買ってしまいました。

西谷:インソールには適応に時間がかかるので、試着だけだと判断しづらいかもしれませんね。某社のも確か数百キロは乗ってみてくださいという案内だったと思います。インソールを変えると足首の動きが変わり、膝や股関節の動きも変わるので、最初はその動きに適応できないんですよね。その適応期間中には痛みが出てしまうケースもあるのですが、適応してくると変わってくると思います。

適応期間が必要という意味では、今回開発しているインソールも一緒です。それこそ、インソールを交換して適応期間中での違和感も、オンラインサポートがあれば、ご相談に乗ることが出来ますし、問題の解決に手助けしてあげられるかと思っています。

開発中のインソール

身体の構造を見るフィッティング

個人的な相談なんですが、私はカーボンソールのシューズがどれも右足だけ合いません。違和感があるのが、足の外側の側面に当たる感じがあり、いろんな人に聞いているのですがここが当たるのは珍しいとのことで、いまだに解決できていないのですが、何が原因だと思いますか?

西谷:確かに珍しいとは思います。ただ、足のアーチは内側が着目されやすいのですが、外側にもあります。お尻の外側の筋肉等が弱いのかもしれません。こういった症状は、足の形が問題かと思われるかもしれませんが、筋肉はつながっているので、足の外側のアーチを引っ張り上げている筋肉が弱いと、アーチも崩れてしまいます。今回はそれがお尻の部分かもしれませんね。ちょっと見てみてもいいですか?

おねがいします

西谷:(足回りを触りながら)このゆがみ方ですと、こちらの内側の筋肉が強くて、やはり外側の筋肉が弱い気がしますね。試しに片足立ちをしてみてもらってもいいですか?まずは左足で。

(左足で片足立ちをする。バランスが取れている)

西谷:では、次は右足で。

(右足で片足立ちをするが、ふらふらしてしまう)

西谷:やっぱり弱いですね。ここが崩れているので調整していきますね(と足を揉み始める)。これで、もう一回右足で立ってみてもらえますか?

(再度右足で片足立ちをする)すごい、さっきよりだいぶ安定していますね。

西谷:やはりアーチの崩れがあるので、右側のお尻を鍛えると改善する可能性はありますね。もしくは、それこそインソールを調整してでアーチの崩れている部分をサポートするという手もあります。そうすれば、あえて鍛えなくても使いやすくなるので、手軽に調整することが出来ます。
もしくはクリートの位置をズラすのでも変わるかもしれません。骨盤が右側に歪んでいる状態なので、通常の位置にクリートがあると、その歪んでいる分を足で調整してしまっているので、歪んだ分をクリートの位置で調整してあげると、サドルに座ったときに、ちょうど骨盤が前に向いた状態になると思います。
こういう場合、普段のフィッティングであれば、まずはクリートの位置を動かすことから調整してみます。

グロータックはクリート調整する製品も販売しています。
(西谷さんおすすめ製品というわけではありません)

身体を触るだけで、ここまでわかるというのは、やはり理学療法士の経験があってこそですよね

西谷:そうですね。ほかのフィッターさんがどこまでできるかは把握していませんけど(笑)。やはり身体科学を勉強してきたことで、より具体的な改善点などを提案できる方だとは思います。
この経験もあって、フィッティング時に触診等によるボディチェックはかなり念入りにやります。自転車に乗る前もそうですし、ペダリングしていただいている途中でも触りながら筋肉の動きなどを見ています。
また、必要に応じてその場で体の動きを指導して、足りない部分の筋肉を刺激したりして、変わった感覚などを体験してもらいます。

刺激というのは、さっきみたいに揉んだりするってことですか?

西谷:それも過去にはやっていたのですが、それ自体は場当たり的な対処になってしまって、毎回来てもらわないといけなくなってしまうので、自分で出来る体操やストレッチなどを教えて、自分で改善できるように指導しています。特に重要そうなものに関しては、私が見本をしたものを動画にしてお渡ししたりします。また、よく使うものに関してはすでに動画としてプールしてあって、それをおくったりもしていますね。

個人的に過去に受けたフィッティングは、動きの癖等は教えていただけるのですが、悪いところを直すための具体的な指導まではなく、身体の使い方を指導して教えていただけるのはすごく嬉しいですね。

西谷:コーチングのような領域までやるところは少ないとは思いますので、ここらACTIVIKEの強みではあると思います。ポジションを合わせるだけでなく、身体と自転車全体で見て、皆さんの悩みそれぞれに対して解決をしていければと思っています。

みなさんには自転車を通じて、長く健康的に過ごしてほしい。

西谷:フィッティングを始めてから感じていることとして、自転車乗りの方は自分の身体についてあまり興味のない方も多い印象です。今回のインタビューを読んでいただけましたら、ちょっと自分の身体にも目を向けていただくキッカケになっていただけると嬉しいです。

ACTIVIKEとしては、サイクリストのみなさまとのコミュニケーションを密に取れるような体制を取っていきたいと思っています。フィッティングを一回受けたら終わり、製品を買ったら終わり。これで上手くいくのは理想ですが、実際は一人一人が抱える問題はそれぞれ違うため、そう上手くいかないケースも多いと思います。そのため、何か困ったことがあれば、気軽に声をかけていただいて、解決してあげられるサービスを進めていきたいと思っています。

実はフィッティング自体にはこだわりはなくて、考えの根本としては「みなさんに長く健康的に楽しんでほしい」ということなんです。

理学療法士として病院で見てきた患者の方には、重い病気や障害を抱えてしまい、上手く動けなくなってしまったという方もたくさん見てきました。そういう方を少しでも将来減らしていければ、という想いが独立した理由の一つでもあります。

自転車は、気軽に始められますし生涯スポーツでもあるため、健康維持にすごく良いと思っています。みなさんには、自転車を通じて長く健康的に過ごしてほしい。そのお手伝いが出来るのであれば、手段はフィッティングだけでなく、様々なアプローチをしていければと思っています。


フィッティング&コンディショニングスタジオ”ACTIVIKE”の西谷さんに、バイクフィッティングについて伺ってきました。ACTIVIKEではポジション調整のみならず、体の使い方のコーチングや身体のケアをするコンディショニングまでトータルにサポートして、サイクリストの悩みを解決していきたいとのお話しいただきました。

実際、筆者としても自転車悩みを相談したところ(シューズ以外にも実際は様々なお話をさせていただきました)、親身になって解決策を提案してくださいました。

その根本にあるのは、理学療法士として経験してきた技術とみなさんに健康でいてほしいという想いとのことです。身体の痛みがある、もう少し速くなりたい、そんな自転車への悩みのある方は、是非ACTIVIKEにご相談してみてはいかがでしょうか。

前編 | 後編


西谷亮
フィッティング&コンディショニングスタジオ”ACTIVIKE”代表。理学療法士の知識と経験を生かしたバイクフィッティングとパーソナルコーチングを得意としている。またバイク上のフォームに関する研究活動も行なっている

ACTIVIKE
http://activike.com/

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