「カラダに痛みが出てくる」「もう少し速く走りたい」
自転車を本格的に乗り始めると少しずつ見え始めてくる、走ることへの課題。
その課題は、バイクフィッティングで解決するかもしれません。
東京都三鷹駅から徒歩五分の場所に、バイクフィッティングを専門とする「ACTIVIKE」があります。
「実走での動きを見るためには、通常の固定ローラーではなく、前後左右に動くGT-Roller F3.2良い」というのは、ACTIVIKE代表のフィッター西谷亮さん。
元理学療法士という経験から、ポジション調整という枠を超えた「カラダのサポート」を行うACTIVIKEのフィッティングサービスについて伺いました。
前編 | 後編
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ACTIVIKEの考える「フィッティング」とは
──フィッティングというお仕事について教えてください
西谷亮さん(以下、西谷):フィッティングは、一般的に自転車のサドルやハンドルの位置などを動かして、その人の体に合わせたポジションの調整をするものです。しかし、ACTIVIKEではポジション調整にとどまらず、自転車と体とのトータルでマッチするライディングスタイルの提案する仕事だと思っています。個人的にはポジション調整はフィッティングという大きな枠組みの中の1つだと思っていて、そこに身体の使い方を提案するコーチング、身体のケアをするコンディショニングもフィッティングの一部だと思って仕事をしています。
もちろん自転車という機材を自分の身体に合わせるのは、自転車に乗る最低限の環境として必須です。とはいえ、自転車を動かすのはやはり自分の身体なので、身体の動きも含めてトータルで見ていかないと、最適な状態で自転車に乗ることが出来ないと思っています。
──以前は理学療法士をされていたとのことですが、その経験が現在のフィッターとしての考え方につながる部分はございますか?
西谷:そうですね。理学療法士は病院やクリニックでリハビリ等を行う職業なのですが、ただリハビリのお手伝いをするだけでなく、人それぞれの症状に合わせて、正常な動きに戻すためのリハビリメニューの指導だったり、段差の高さや手すりの位置等の住環境の改善案を提案します。ここはフィッティングと共通する部分じゃないかと思っていて、その人の身体能力に合わせたトレーニングや自転車の機材環境が重要だと考えました。
また、理学療法士はバイオメカニクスの学問が根底にあるので、細かく関節の動きを分析することで、どこに負担がかかっているか、どこを一番使っているか等を見ることができます。単なるメソッドや計算式を当てはめたものではなく、実際に身体の動きを見たり触ったりして筋肉の動きを確認し、人それぞれの癖等の特徴を掴んでから、それに合ったポジションやトレーニングの提案が出来るのが強みだと思っています。
特にACTIVIKEでは、乗り始めの方やロングライド主体の方のような人が多く来られていて、ロードバイクに乗っていて身体に痛みがあったり、もう少しレベルアップをしたいというような要望からフィッティングをすることが多いです。痛みのある方には、身体に負担の大きい使い方をしていないかを見極めて、負担の少ないポジション調整や身体の動きの指導しますし、レベルアップをしたい方には、例えば、空気抵抗の少なく力の入りやすいフォームが取りやすいようにポジション調整をして、そのフォームを維持するために必要な筋肉に対して、その人に弱点等があれば、そこを鍛えるための指導もしています。
このように、人それぞれの身体能力を正しく分析でき、解決策を提案できるという点が理学療法士の経験が活きているとは思っています。
フィッティングにおけるGT-Roller F3.2の有効性
──ACTIVIKEではフィッティングにGT-Roller F3.2をご使用いただいていますが、このローラーを使っている理由を教えてください
西谷:最近はバーチャルライド中心の方もいらっしゃいますので、一概にはいえないのですが、実走のパフォーマンスを上げる目的であれば、自転車と体の動きというのが極力実走に近い状態での体の動きを見て調整していきたいという点があります。自転車を上手く走らせるには、人馬一体でなければならないので。完全に固定された状態での動きから調整しても、効果はもちろんゼロではありませんが、実走に近ければ近いほど、ベストな調整が出来ると思います。
GT-Roller F3.2は前後左右に動くので、体と自転車の関係が見やすいという点がまず1つあります。実走に近い3本ローラーですと乗るためのスキルが必要になるため、乗れる人乗れない人が分かれてきてしまうことがありますし、安全面としても固定されているほうがお互いに安心です。総合的に見て、GT-Roller F3.2はバランスが取れていると思います。
また、3本ローラーと違った良い面としては、実走よりも体のバランスの崩れがわかりやすいという点もあります。GT-Roller F3.2に乗ってもらうと、バランスが取れずに後輪がずっと傾いてしまう人も結構います。極端な人ですと、脱輪防止ベアリングに常に当たってしまうような人も。その原因としては、バイクに対する体の重心位置が適切でなく、左右のバランスがズレていたり後輪荷重になりすぎているということがあります。
こういった状態になってしまう方も、ポジションや動きの調整をすると、きれいに乗れるようになりますので、調整の評価としてもわかりやすいです。また、乗っている方も、バランスが取りやすくなったという体験が出来るため、納得していただけるという点も良いですね。
ポジションに問題のある人の共通点
──フィッティングはどの段階で受けたほうが良い等はありますか?
西谷:出来れば、ロードバイクに乗り始めてすぐに来ていただいた方が良いと思っています。というのも、なんとなく乗って慣れてしまうと、先ほど言ったように、重心がズレたまま乗ってしまっていたりと、変な癖がついてしまう場合があります。その癖がついてから矯正していくというのは、時間がかかってしまうことも多いです。最初にフィッティングを受けていただければ、最初から良い状態で自転車に乗ることが出来るので、そのような癖も付きづらいですし、故障に悩まされることも少なくなると思います。
──乗り始めが肝心ということですね。変な癖がついてしまう、とのことですが、特にポジションが良くない人の共通点はありますか?
西谷:それはありますね。まず、サドルが高すぎる方が多いです。たぶん、ロードバイクはサドルを高くするものだと思って、購入してから高さを調整してそのまんま、という方が多いのではないかなと思っています。また、前後の位置を調整していない方も多くいらっしゃいます。
自転車に乗るには重心を良い位置にもっていかなければならないので、適切な高さと前後の調整が重要です。ここが適切でないと、サドルかハンドルに偏って体重が乗ってしまうポジションになってしまいます。やはり、自転車を走らせるには、ペダルに体重が乗せやすいポジションが良いので。
サドルの高さを上げるだけですと位置は後ろになることもあり、リーチが適正でなく、フォームとしては腰がたって肘が伸び切ってしまうようなポジションになってしまってしまいます。それでサドル荷重になり、足をガシガシ踏んで回すようなペダリングになってしまっているというというケースはよく見られます。
そのため、まずサドルの高さを下げよう。となる人が多いですね。
逆に、自転車歴が長い方でなかなか速く走れないと思ってフィッティングを受けられる方は、サドルの高さはこだわっているのですが、ハンドルの高さをいじられていない人も多いです。購入時のコラムの高さのままという人が多いですね。コラムカットが自分でやるのが不安だという理由もあるみたいですが。
ハンドルが高いと体がどうしても起きてしまうので、空気抵抗にも良くないですし、重心も前に移動しづらくなります。そうするとスキルアップも難しくなります。ハンドルを下げたら走るのが楽になったという方も結構いらっしゃいますよ。
初心者の方は体を前に倒した状態で自転車に乗るのがそもそも難しいので、ハンドルが高くなってしまうのは仕方がないと思うのですが、ある程度の距離が乗れるようになったら、ハンドルを下げて、体幹を使って自転車に乗れるようにした方が良いと思います。
──いきなり最適なポジションにしても、使う筋肉が鍛えられてないと、すぐ疲れてしまって、またサドルに乗ってしまいそうな気もしますが
西谷:理想は自転車に乗るだけではなく、体を鍛えるところから行うことが良いとは思いますが、レーサー志向のような方ばかりではないので、その人の嗜好にあった乗り方をヒアリングした上で、乗りながら楽しみながら自然と鍛えられていくというような、ちょうど良いところをポジションを探っていくのが腕の見せ所だと思っています。まずは楽しむことも重要ですので、そのうえで身体を鍛えるキッカケになってくれれば良いと思っています。
鍛えるという点では、その人の身体の弱いところを見て、それを改善するためのトレーニング動画をお渡しするサービスも行っています。
また、フィッティングの時間だけでは、すべてを見るのは難しいところがありますので、フィッティングを受けた後どうなったか等のアフターフォローとして、オンラインチャットでの個人相談も受け付けていますよ。
──フィッティングは何度か受けてほしい、という話をよく聞きますが、鍛える等の身体の変化によって変わってくるからということなのでしょうか?
西谷:毎月のように高頻度で受ける必要はないとは思いますが、スキルを覚えたり体の使い方わかってきたら、感覚がだんだんズレて来てしまうということもあるので、再度調整はしていくことは良いことだと思います。
あとは、ツーリング主体だった方がレースを走りたいというように、乗り方の嗜好が変わってきたりすることもあるので、それにマッチした乗り方に調整することも出来ます。
とはいえ、一度フィッティングでご指導させていただければ、そこから大きく変わるということはないので、微調整という形になります。そのため、2回目以降は料金はお安くさせていただいているので、繰り返しフィッティングを受けやすい体制にはしております。
あとは、パーツを変えたりするのも自転車の楽しみ方の1つだと思いますが、パーツ1つ変えるだけで違和感が発生したりすることもあるので、そこをフィットさせるというのもお手伝いできますね。
定期的に見させていただければ、より長く、最大限に楽しめるとは思います、しかし、大きく乗り方の嗜好が変わったり、新たな違和感が発生したりしなければ、一度受けていただいただけでも問題はないと思いますよ。
後編は、ACTIVIKEのオンラインスタジオ、インソール開発等、フィッティング以外からの「カラダのサポート」のアプローチについて伺います。
前編 | 後編
西谷亮
フィッティング&コンディショニングスタジオ”ACTIVIKE”代表。理学療法士の知識と経験を生かしたバイクフィッティングとパーソナルコーチングを得意としている。またバイク上のフォームに関する研究活動も行なっている
ACTIVIKE
http://activike.com/