EQUALペダル Fittingトーク with フロッグサイクル 児玉修一さん

はじめに

皆様は、グロータックから発売しておりますEQUAL 多調整型ROADペダル(以降、EQUALペダル)をご存じでしょうか。EQUALペダルはQファクターやカント角、スタックハイトなど、様々な調整機構を搭載したビンディングペダルです。これらの調整機構を利用して、関節の痛みが出にくくなるようにしたり、自分にとってベストなポジションを追求したり、ビンディングペダルをより多くの方に楽しんでいただけるような製品となっております。

しかし、EQUALペダルにご興味をお持ちであったり、導入を検討されていたりしても、

「機能が多すぎて、結局どんな使い方をすれば良いのかわからない」
「自分に使いこなせるか不安」
「膝の痛みとかあるんだけど、本当に解決できるの?」

と、このような考えから二の足を踏まれている方が少なからずいらっしゃるかと思います。

そこで、EQUALペダルについての理解が深まり、また上手に使いこなせるようになるコンテンツを作成しました。EQUALペダルに興味を持ったり、お手に取っていただけるきっかけになれば幸いです。

今回は鹿児島県鹿屋市のバイクショップ、フロッグサイクルの児玉修一さんに予めEQUALペダルを使っていただき、ポジションに関する考え方や、EQUALペダルをどのように使われたのか等、広くお話を伺いました。

※ 本稿における内容は、あくまでも一人の使用者による感想です。


Product Page

Concept and Data

◆ ◆ ◆


フロッグサイクルについて、児玉さんについて

自転車の街、鹿屋

――フロッグサイクルがある鹿児島県鹿屋市はどのような街ですか。

児玉修一さん(以下、児玉):鹿児島は薩摩半島(西部)・大隅半島(東部)に分かれているんですが、鹿屋市は大隅半島の中央にあります。人口は10万人をちょっと切るくらいで、それほど大きな都市ではなく、自転車人口も多くはないです。ただ、鹿屋体育大学やロードプロチームのシエルブルー鹿屋の本拠地になっていて、ある意味では自転車に盛んな街ですね。

――自転車競技部の学生やプロの選手たちにとって、ゆかりのある街ということですね。

児玉:そうですね。彼らの自転車を診る事もあります。

――人口10万人を切っているという事は、それだけ交通量が少なかったり、自然が豊かだったりと、サイクリングがしやすそうですね。

児玉:はい、ちょっと郊外に出ればすぐに信号の無い道があって、山もあり、平坦もあり…みたいな所なんで。オフシーズンには他所のプロチームも合宿に訪れるので、走る場所としては適してると思います。

――フロッグサイクルに来店されるお客様はどのような方が多いですか。

児玉:うちは田舎のお店なので、扱っている車種もロードからクロス、MTB…ママチャリは流石に置いてないですけど、修理の際は地域のおじちゃん・おばちゃんたちの自転車も含め、分け隔てなく診てます。なので「地域の自転車屋さん+スポーツとして楽しんでる人やレースをやってる人向けのお店」って感じです。

――車種を問わず、幅広く診られているという事ですね。お店で通常業務以外に、何かチーム活動などはされていますか。

児玉:チームとかは無いんですけど、月に一回おはようライドみたいな感じで、お客様と一緒に走ってます。

――児玉さんは、先ほど名前が挙がったシエルブルー鹿屋のメカニックも担当されているとの事で、レース現場で行う整備と、お店で行う通常の整備では何か違いはありますか。

児玉:基本的には一緒だと思いますけど、短い時間で確実に、ポイントをおさえるっていうのがレースでの整備です。一般の整備であれば、オーバーホールのように時間をかけることもできますけど、レースは時間が限られていたり、台数をこなす必要があったりするので、効率良くやらなければいけないですからね。

児玉さんの現役時代

――整備の的確さだけでなく、スピードも求められそうですね。ところで児玉さんは以前、MTBのエリートライダーだったという情報があったのですが、詳しくお話を伺えますか。

児玉:ダウンヒルの選手をやっていました。日本に第一次マウンテンバイクブームがあった頃ですね。

※ 1980年代後半から1990年代前半にかけて日本で起こったアウトドアブームの一環。当時アメリカで普及し始めたマウンテンバイクが日本に輸入され、国内メーカーがバイクを作ったり、各地で大会が開催されたりするようになった。

――まさにMTB黎明期を走られていたんですね。

児玉:そうですね。当時のMTB業界は結構熱くて、あの頃に熱心に乗られていた方が、今でも熱を持って大会を引っ張ったり、コアなお店をやっていたりしているんです。

――当時のMTBブームを経験した人が、今もなおこの業界を支えているという節もあるという事ですね。

ポジション調整の重要性や考え方について

「気持ち良いところ」

――児玉さんは頻繁にバイクやクリートなどのポジション調整をされますか。

児玉:いえ、割と一度決めると、そのままでいくタイプですね。最初はじっくり決めますけど、その後はシューズとかを変えたりしなければ、そのままです。

――そのポジションを決める時に意識している事や、こだわっているポイントなどはありますか。

児玉:ポジションを決めるときは正解値というか「気持ち良いところ」が大体自分でわかっているので、そこに合わせていってます。後はあんまり固定されているのは好きじゃないので、足や膝にある程度のフローティングというか、余裕があるのがいいです。足の向きがバイクに対して水平かどうかは拘らなくて、開いていても閉じていてもいいので、「気持ち良いところ」かどうかが気になりますね。

――確かにフローティングが無いと力の逃げ場が無いので、短時間なら高いパワーが出せても、暫く乗っていると疲れやすかったり、痛みが出たりする事もありますよね。

児玉:はい、私は痛みが出るのが嫌で。昔はよく膝を痛めてました。治ったと思ったら、踏むとまた痛み出して…を繰り返してました。なので、「この位置だと何となく痛くない」という所を探して、そこに合わせてます。合わせた後にも、ある程度の自由が利くようにフローティングがあったり、ポジションを微調整する余裕があったりすれば理想的ですね。

――児玉さんのフィッティングは、一般のお客様もお店で受ける事ができますか。

児玉:できますよ。ただ、私はプロのライダーではなかったので、「ペダリング効率を良くして」とか、「推進力を突き詰めたポジションに」というよりは、例えば初心者の方が「何となく気持ち良く」こげるようなポジションの中心に持っていくっていう感じになります。

――あくまでも、その人が気持ち良く乗れるようなポジションという事ですね。痛みが出たり、疲れにくいポジションであれば、ペダリング効率に関しても当たらずとも遠からず、適度なポジションになってそうですね。

児玉:その方が良いと思うんですよね。とりあえずは痛くないポイントの中心地をある程度定めて、あとは乗って…って感じです。プロのフィッターさんは違うんでしょうけれども。

――本当に突き詰めたポジションにしたいという方は、フィッティン専門のプロに見てもらうのが良いかも知れませんね。因みに、ロードバイクとマウンテンバイクでは、ポジションの決め方にどのような違いがありますか。

児玉:基本的には同じですが、ロードと比べてMTBは「自転車を操る」というウェイトが高いです。MTBは走るとなれば荒れた路面に、上りあり、下りあり、ジャンプもありで。なので操りやすさか、ペダリング効率か、どっちに寄せるかのせめぎ合いがあると思います。人によっては思いっきりロード寄りのポジションにしているライダーもいますし、逆にMTB寄りで、ペダル一を深くしたり、Qファクターを広くしたりする人もいます。

――ケースバイケースという事ですね。ダウンヒルのレースでもペダリングのポジションは重要ですか。

児玉:コースにもよるんですが、上り返しがあれば当然ペダリングが必要なので。ペダルもビンディングペダルを使う人もいればフラットペダルを使う人もいますね。

――なるほど。フラットペダルならペダルと足が固定されていないので、児玉さんの「気持ち良いところの中心に持っていく」というポジション理論はとても腑に落ちて、その重要性が理解できますね。

EQUALペダルについて

「気持ち良い・気持ち良くない」で決めてしまっていい

――事前のアンケートで伺いましたが、児玉さんはEQUALペダルについて、まずステップイン・ステップアウトの軽さに驚かれていましたね。

児玉:はい。「他社のビンディングペダルだと外しにくいから」と言ってクリートの固定力を下げてしまうと、クリートがペダルに嵌ってるのか嵌ってないのかわからない事があります。でもEQUALペダルはそれがなくて、固定力を下げてもクリートが嵌るのがわかりやすいです。バネの違いもあると思うんですが、絶妙な「気持ち良い」部分にできるんですよね。

――ありがとうございます。クリートの固定力は弱めがお好きという事でしょうか。ざっと、どの程度に調整していますか。

児玉:中の弱くらいですね。どちらかというと弱い方が好きです。

――なるほど。この点も個人の好みの部分ですよね。次に、児玉さんにはEQUALペダルのフローティングについても評価していただきました。以前までお使いだったペダルとの違いを感じられたのではないでしょうか。

児玉:結構いい感じに動きましたね。T社のペダルだとフローティングで気持ちいい場所に移動できても、バネで中央に戻される感じがあるじゃないですか。それだとセッティングはシビアにしないと気持ち悪いと思うんですよね。それがEQUALペダルではないですね。フローティング量はT社的だけど、戻される感じがないから気持ち良いんです。

――自分の意思か、バネの力か、どちらを使って足を元の位置に戻すのが好きかは人によりますが、EQUALペダルに関してはどの赤・青・黄、どのクリートでもフローティングするので、「気持ちいいところ」の中心でびっちりポジションを出さないと違和感が出る人もいるかと思います。

児玉:あとT社はクリック感が無い事があって、不安定ですよね。

――そういう場合もありますよね。クリートキャッチの時の音をルーティンの一つとしている人にとっては、これも違和感かも知れません。ところで、EQUALペダルの調整時の分解はやはり大変でしたか。

児玉:大変でしたね(笑)。ナットがポロンと落ちるのは結構ストレスでしたね。あれをもう少し、例えばカバーとの勘合をきつくするとかで改善してもらえたらいいんですけどね。

――貴重なご意見ありがとうございます。EQUALペダルの調整の話に戻りますが、児玉さんは以前からお使いだったS社のロングシャフトタイプのペダルに合わせて、EQUALペダルのQファクターも外側に広げていましたね。以前からQファクターの広いペダルを使われていたのは、何か理由があったのでしょうか。

児玉:私の体が結構大きいので、しっくりくる広さに合わせた形になります。レースレベルの人であれば出力値とか、そういったパフォーマンスで決めるのが良いでしょうけど、一般の人であれば「痛い・痛くない」とか「気持ち良い・気持ち良くない」で決めてしまっていいと思います。「何となく膝の内側が痛い。→どこか変えてみよう。→変えたら痛くなくなった。」っていうプロセスの、「変える」っていうのが、大事じゃないですかね。

セオリーや見た目は関係ない

――ポジションを変えるという点において、EQUALペダルは様々な調整が個別にできて、合わなかった場合はすぐ元に戻せますから、色々と試しやすいですよね。

児玉:僕はカント角の調整を試したんですけど、合わないんですぐ戻しました(笑)。多分、このカント角のままずっと乗り込んでいけば、それに合わせて筋肉とか身体が順応していって、良い方に向かっていくのかもしれないですけど、一般人レベルで行くと、「痛い」とか「合ってない」とか、そういう結論に達するんじゃないですかね。難しいですね。

――カント角の調整をれたのは単純にどのような踏み心地になるかをお試しになったということでしょうか。

児玉:昔からシューズの裏にシムを入れてました。膝が痛くて、内転させるように、外側にシューズのソールに入れたりしたり膝が内を向くようにして。EQUALペダルでもカントを付けると痛みの解消になるのかと思って試したんですけど、逆にすぐ痛くなっちゃいました。

――そうだったんですね。シムのようなスペーサーを使った場合とでは傾き方が微妙に違うと思いますから、相性の違いがあったのでしょうか。

児玉:キレイにこごうと思うと逆に痛くて、セオリーとか見た目とか関係なく、膝を外に向くように広げながら踏んでいくと痛くないまま乗っていられるんですよね。見た目をきれいに、足首、膝、腰が一直線になるようにこぐのが必ずしもベストではないのかな、って気がします。やっぱり自分の個性…股関節が固いとか、膝に障害があるとか、生まれ持って左右の脚長が違うとかに合わせて「気持ち良い」ポジションでこぐようにするのが一番ですね。

――EQUAペダルには様々な調整機構があるので、その内の一つでも解決に繋がれば、機材としての価値があるのではないかと考えております。さて、児玉さんのEQUALペダルにおけるポジション調整は、最終的にどのような状態になりましたか。

児玉:Qファクターは広げましたが、カント角、回転方向や前後方向は変えてません。ポジション的には前使っていたペダルと基本的に同じです。その代わり、フローティング感とステップインの感触はじっくり調整しました。セッティングが終わった状態からEQUALペダルを使おうとすれば。結局こうなると思うんですよね。

――ポジションが既に固まった状態から無理に変える必要はないですからね。ところで、EQUALペダルで気になる点として、「ステップインする時のペダル位置(角度)」を上げられていました。詳しくお話を伺えますか。

児玉:どうしてもバネが後ろにあるので、重心がそっちにあるせいなんでしょうけど、(ペダルが静止状態で)直立よりやや後ろに傾いてるから、ペダルを見ないでクリートをキャッチするときに最初「おっ?」と思ったりして、すくい上げるような感覚で。今までのペダルと比べると、そういった違いはあるのかなと思いました。

――その違いには、乗っていれば慣れていきそうでしょうか

児玉:ビンディングペダルに慣れている人なら大丈夫でしょうね。年数が浅い人は戸惑うかもしれません。まあ年数の浅い人がこのペダルを求めるかどうかわかりませんけど(笑)。コアな方にとっては、ネガの部分以上に良いところがあるので良いとは思いますよ。

――今回EQUALペダルを使ってみて得られた気付きや、良かったと思う点などはありますか。

児玉:何度も言ってますけど、やっぱりフローティングとステップインの心地良さです。セッティングは色々試せるんで楽しいですけど、それが終わったら、後はこの二つの心地良さが印象に残ってますね。

――心地良さというのは官能的な話ですが、趣味で乗っている自転車だからこそ重要な部分ですよね。

児玉:クリート固定力の固さ調整も、あの機構だから心地良くできたし、ここまで真剣に突き詰めようとは思いませんでした。

――ありがとうございます。EQUALペダルに興味を持っている方へ、アドバイスや上手く調整するためのコツやがあれば教えてください。

児玉:やっぱり「痛み」とか現状のペダリングに問題や課題を抱えていたら、試してみる価値はあると思います。決まっちゃってる人は無理に使う必要は無いと思いますけど、不満のある人にとっては解決の糸口になるんじゃないかなと。勿論、レーサー向けにポジションを突き詰めるっていうい使い方もありますけど。

――EQUALペダルを使ってペダリングの悩みを解決するにあたって、筋力とか技術とか単純にポジションだけが真の原因じゃない場合もありますよね。その点はどうお考えですか。

児玉:そうですね。でも一足飛に筋力もつかないし、乗り方もうまくならないので、試せる調整があって、それがヒットすればいいと思いますよ。あくまで手段の一つとして考えてもらえるといいと思います。

筆者所感

今回のインタビューを通じ、EQUALペダルの魅力は数値化できない部分にも存在する事を改めて確認しました。
児玉さんの口から何度も発せられた「気持ち良いところ」とは、ポジションが適正位置に落とし込まれた際の体とバイクとの一体感や、抱えていた痛みやモヤモヤした感覚からの解放感を言語化したものです。

調整機構の数はあくまでも選択肢の数であり、その人にとって本当に必要な調整はおのずと限られてきます。
やはり時間をかけてでも、少しずつ調整しながら自分の体がどう反応するかを確認し、最終的な「気持ち良いところ」を探し当てる、のが解決への近道となるでしょう。

グロータックについて

――EQUALペダルとは関係ありませんが、今後のグロータックに期待する事はございますか

児玉:ハンドルとか。今回のようにポジションに関連して言えばまだ出てないですよね。あとはステムとかシートポストとかで、ネジを緩めたり締めたりしなくても、サドルの角度を変えたいのにまたズレちゃったり…とかじゃなくて、もうちょっと定量的に変えられる仕組みがあったらいいですね。

――それは面白そうですね

児玉:登りと平坦でのポジションを走りながら変えたいという欲求が個人的にあって、それが叶ったらいいなと思っています。激坂を上る時のために、サドルを一時的に+5mm前に出せたり、もうちょっと高くしたりとか…。基本的にサドルっと前にすると、低くなるじゃないですか。クランクに対して脚が近くなって。そこでサドルを上げて、前に出せればいいな、と。

――市場にある、近いものとしてはドロッパーシートポストになるでしょうか。

児玉:ドロッパーって無制限に動くけど任意の位置では難しいじゃないですか。僕、ドロッパーではシートポストにカラーを入れて、王滝に出てるんです。登りポジションは高くして、平坦とか脚を回したいだけの時は下げたいんで、10mm動くようにカラーを入れて使った事があります。筋力が無いからって言われればそれまでなんですけど(笑)。そんな感じの簡単な機構であれば欲しいです。ドロッパーだと仰々しいので。

――定量的にポジションを変えられる仕組みがあればいいな、という事ですね。

児玉:そうですね、人によって好みはあるでしょうけど、トラベル量もロード向けとかMTB向けとか複数の種類があったらいいなと思いました。昔とあるブランドから、根元のリングを回転させるとシートポストを上げ下げさせられるパーツが一瞬出てたんですけど、オートバイのサスペンションのプリロード調整みたいな、そんなイメージのやつです。走りながらだと調整が大変そうですけど…。

――貴重なご意見ありがとうございました。弊社の今後の製品にご期待ください。


フロッグサイクル

鹿児島県鹿屋市にのサイクルショップ。ロードバイクやマウンテンバイク、クロスバイク、電動自転車など多彩なラインナップを取り扱う。
店主児玉さんはMTBダウンヒルの競技経験やプロチームのメカニックなど、多種多様な経験を持つ。

住所: 鹿児島県鹿屋市川西町2494-14
電話番号: 0994-45-5833
営業時間: 平日 10:00〜19:30、土日祝日 10:00〜19:00
定休日: 木曜日、イベント開催時

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