「3本ローラーって難しいんでしょ?」
そんな不安があるために、3本ローラー導入を躊躇されている方も多いのではないでしょうか。
「3本ローラーは簡単」と謳っているところも多くありますが、初めての場合、実走の走り出しの感覚とかなり違い、正直難しいと感じる方が多いと思います。
しかし、その難しさというのはスキルがないからではなく、「実走の走り出しの感覚」とは違うことから発生する”恐怖感”のせいで、身体が上手く動かなくなり、ちょっとしたことでペダリングを止めてしまう等で、乗れないという場合が多いです。逆に言えば、恐怖感を克服して乗れてしまえば、不思議なことに「(固定ローラーより)すごく実走に近い!」という感覚になります。
本記事は、“恐怖感”にどう向き合って3本ローラーに乗るかをフォーカスした乗り方解説の記事となっています。
正直、3本ローラーは怖い
筆者は、もともと趣味でロードバイクには乗っていましたが、GROWTACに入社するまで3本ローラーに乗ったことがなく、最初はもちろん乗れませんでした。
まず3本ローラーの上で自転車に跨ってみて感じることは「とにかく怖い」ということでした。その“恐怖感”から、身体が言うことを聞かないし、少しフラついただけでペダリングを止めてしまい、一息つく。その繰り返しでした。
最初は「ペダリングのスキルが足りない」「バランス感覚が悪い」ことが原因で乗れないのかと思っていましたが、何度か練習するうちに徐々に乗れるようになりました。そして、一度しっかり乗れるようになってしまうと、なぜ自分が乗れなかったのかわからなくなってしまいました。
その後、展示会や試乗会等で数多くの方に「3本ローラー(4本ローラー含)に乗る方法」をアドバイスをしてきまして、そのほとんどの方が3本ローラーに乗れるようになっています。そこで、なかなか乗れない方の共通する点はスキルが問題なのではなく、“恐怖感”で身体が上手に動かないために、乗るためのコツ自体を行うことが出来ないのが原因でした。
逆に言えば、ペダリングが上手くなくても、バランス感覚がすごい良くなくても、走り出すことさえ出来てしまえば「3本ローラーに乗る事自体」は出来ます。
上手に乗れるよう努力して3本ローラーを乗っていれば、ペダリングスキルやバランス感覚が向上するのは確かです。しかし、3本ローラーに乗れない理由は「スキル」ではない場合がほとんどです。
スキルは追々つけていくとして、まずは“恐怖感”を克服して3本ローラーに乗れるようになりましょう。一度しっかりと乗れてしまえば、次からは簡単に乗れますので、あとは自由に自分の課題を見つけてスキルトレーニングをしましょう!
本記事は「3本ローラーに乗る」ことを目的とした記事ですので、スキルアップ等についての言及は一切しておりません。解説する筆者自身も、普段から3本ローラーに乗っているわけではないので、見るからにスキルが高くはありません。逆に言えば、スキルのない方でも乗れることが分かるかと思います。
3本ローラー乗り方解説動画
言葉よりも実際に見たほうが理解しやすいと思いますので、解説動画を作成いたしました。こちらの動画をご覧いただきこの記事を読んでいただくと、より分かりやすいと思います。
3本ローラーに乗るための3つのコツ
3本ローラーに乗るためには、3つのコツがあります。
この3つを出来さえすれば、3本ローラーを乗る事が出来るでしょう。
- 身体をリラックスさせる
- 前方を向く
- ペダリングを止めない
この3つを同時に出来るように頑張りましょう。
たったこの3つなので、文字で見るとかなり簡単そうです。
しかし、初めて乗る方はこの3つがどれも出来ない方が多いです。
“恐怖感”から、身体は強張り全身に力が入ってしまい、ホイールばかりを見つめて逆に自転車のコントロールが上手くいかず、少しのバランスの崩れてペダリングを止めてしまいます。
この”恐怖感”をどう取り除く、克服するかが3本ローラーに乗るための一番重要なことです。
3本ローラーに乗る前の準備
まずは準備から、以下の3点をお勧めいたします。
- ローラーは壁際に置く
- フロントギアはアウターに
- シューズはスニーカーで
ローラーは壁際に置く
今回は壁を使った3本ローラーの乗り方をご紹介するため、3本ローラーは必ず壁際に置いてください。壁との距離は、乗り手の体格等にもよりますので、後に解説する方法がやりやすい位置に調整してください。
また、3本ローラーに慣れてきたとしても安全のために壁際に置くことをお勧めします。慣れてきたとしても、テレビを見ながら走ったりすると、油断して結構バランスを崩します。
フロントギアはアウターに
3本ローラーはスピードがあるほうが安定します。そのため、フロントギアはアウターに入れましょう。最初のうちは、恐怖感からケイデンス速度も遅めになる傾向があるため、強制的に速度が出るギアの位置が良いでしょう。
リアギアは、中間あたりをお勧めいたしますが、あまりトレーニングを積んでいない方は体力的に厳しい可能性もあるので、ご自分の体力に合わせた位置で大丈夫です。
最初は、恐怖感や慣れない挙動から体が緊張するので、実走の数倍疲れます。慣れてくると、疲労も実走とそれほど大きくは変わらなくなってくるでしょう。
シューズはスニーカーで
最初はとにかく怖いです。転倒する可能性もあります。”恐怖感”を少しでも和らげるためにも、スニーカーをお勧めいたします。ペダルはフラットペダルでなくても、ビンディングペダルをそのまま使用いただいて構いません。スピードプレイやSPD等は走りづらいかもしれませんので、フラットペダルがあれば交換しましょう。踏み台もあるとさらに安心出来ます。
慣れてくれば、バランスを崩しても、ビンディングをすぐに外して足をつくことが出来るようになりますので、ある程度乗れるようになったらビンディングに変更しましょう。
3本ローラー自体の設定は、ご使用の3本ローラーの取扱説明書に従って調整してください。
3本ローラー上でバランスを取る
早速、自転車に跨ってみましょう。
壁に手をついてバランスを取ってみましょう。
この状態で身体をリラックスさせることが出来ますでしょうか。
この時点でかなりの恐怖感があるのではないでしょうか?
身体に余計な力が入っていませんか?
片手はハンドルを強く握り、身体には無駄に力が入って強張っていませんか?
この時点でこのような症状になっている場合は、下記のことを意識して、自転車の上でバランスの取れる位置を探してみましょう。
- 自転車をなるべく垂直に
- ハンドルを進行方向にまっすぐ
- 片手はハンドルに添えるだけ(強く握らない)
力が入ってしまう部分を自覚し、その力が入らない位置を身体を動かしてみて見つけます。その際、恐怖感をなるべく持たないよう、気持ちも整えながら行いましょう。恐怖感が強すぎると、身体を動かすことも難しくなります。
壁側とは逆側に倒れそうになってヒヤッとすることもあると思いますが、その直前あたりがバランスが取れる位置です。
バランスが取れているか確認する方法の1つとして、ハンドルから片手を離して、壁だけを支えにしてみましょう。壁側の手に大きく力が入っていたり、ハンドルが自然と切れて自転車が傾いてしまったりする場合は、バランスの取れる位置で乗れていません。
自転車に跨り、壁に手をついた状態で、大きな恐怖感がなく身体をリラックス出来れば、ステップ1は完了です。
もちろん、最初からバランスが取れて恐怖感がない場合は、次のステップへ行きましょう!
3本ローラー上で走ってみる
実際に3本ローラーの上で走ってみましょう!
まずは壁を支えに走り出します。怖いかもしれませんが、気持ちを落ち着かせることが重要です。
壁を支えに両手をハンドルへ
両手でハンドルを握ります。身体や肘を壁に支えながら、壁側の手をハンドルに持っていきます。その際も、先ほどの3点を意識してください。
- 自転車をなるべく垂直に
- ハンドルを進行方向にまっすぐ
- 手はハンドルに添えるだけ(強く握らない)
この体勢でも同様に、大きく体に力が入れず、リラックスしてください。
リラックスが出来ない場合は、バランスが崩れている可能性があります。
ペダリングを開始してみる
身体や肘で壁を支えにしたまま、ペダリングを開始してみましょう。
ペダリングを開始したとき、始めはハンドルが左右にバタつくかもしれません。
バタついた場合、恐怖感からハンドルを力強く握ってしまうかもしれませんが、ハンドルは強く握らずにコントロールします。ハンドルを強く握ると、ハンドルのコントロールが大雑把になり、逆にコントロールが難しくなります。
また、バタついてもペダリングは止めません。ペダリングを止めると絶対に乗れませんので、ペダリングは止めずにハンドルをコントロールしてください。
その際、ハンドルを細かく調整をしようとホイールを見ようとしてしまいがちですが、ホイールは見ずに「前方を向く」ことを心がけてください。
ホイールを見ると視覚に頼ってしまい、細かくハンドル操作をしようとして逆にフラフラしてしまう場合が多いです。自分の身体のバランス感覚でハンドル操作をするために、前方を向きます。実走で白線の上を走る際、白線ばかり見るとハンドルがフラフラしてしまいますが、進行方向を見ると真っすぐ走れるのと同じです。車の運転も同じですね。
こうして、壁を支えにペダリングを開始して、走り出すことが出来ましたら、ほぼ3本ローラーに乗れたも同然です。どうしても走り出すことが出来ない場合については、後述します。
壁から離れる
いよいよ、壁から離れてみましょう。
壁から離れる際は、ハンドルを操作するのではなく、体重を壁側と反対方向に少しずつ移動します。すると、自然と壁から離れていきます。ハンドルは操作しないイメージです。
最初はハンドルが安定せず、フラつきます。
フラつくと、怖いですがこの時「ペダリングを止めない」ことを心がけてください。ペダリングを止めたら、自転車は必ず倒れます。ペダリングを止めなければ、意外とバランスを再度取りなおすことが出来ます。
そして、フラついても、ハンドルを強く握らないでください。
「ペダリングを止めない」ことを気にしていると、なぜか目線がホイールにいってしまう場合がございます。
- 身体をリラックスさせる(→焦ってもハンドルを強く握らない)
- 前方を向く(→進行方向を見て、ホイールを見ない)
- ペダリングを止めない(→絶対に止めないという気持ちを持つ)
冒頭でも述べた、この3つのコツを同時に行うのはなかなか難しいです。
これを難しくする理由のほとんどは“恐怖感”からくる焦りです。
逆に言えば、この3つが出来れば乗れるだろうと信じてやりきってみると、意外と走れるものです。
落ち着いて、この3つのコツを行うようにしましょう。
もちろん、慣れてきたらホイールを見ても構いませんし、ペダリングも極限まで遅くしてバランスを取る練習をするのも良いですよ。
緊急時は壁を頼りましょう
3つのコツを行っていても、大きくバランスを崩してしまったり、どうしても恐怖感に耐えられなくなってしまうこともあると思います。
その場合は、なるべくペダリングは止めずに壁を頼りましょう。壁に体を預けて、バランスを取り直します。そして、また体重移動をして壁から離れていきましょう。
そもそも走り出せない場合
壁を頼りに走りだそうとすると、自転車が傾いていってしまう。
そんな症状が出る場合は、ハンドルがまっすぐになっていない可能性が高いです。ここで、ハンドルを少し傾きとは逆側に調整して見ましょう。
この際、重要なのは「ホイールを見ないで、前方を向く」ことです。
ホイールを見ると、視覚を頼りにハンドルを切りすぎてしまい、想像以上に自転車が動いてしまいます。
ホイールは見ずに前方を向いて、「自分のバランス感覚」を頼りにハンドルの調整をすると、上手く調整がしやすいです。
また、この際もハンドルは強く握らないようにしてください。
走り出せるように、微調整していきましょう。
走り出したら、すこしフラついても「ペダリングは止めない」ことを忘れないでください。
何度も同じことを書いてますが、「1つ気を付けるともう1つを忘れてしまう」ということが多々あるため、何度も同じことを書いています。実際に行う際、上手く行かない場合は、何度も同じことを確認しながら乗りましょう。
最後は自己暗示をかける
「そうは言っても、怖くて3つ同時になんて出来ない!」
その気持ちは、大変よく分かります。特にペダリングは少しフラつくだけでも、勝手に脚が止まってしまう方も多いのではないでしょうか?
実際、展示会でアドバイスさせていただくときも、フラつきでペダリングを止めてしまう方がほとんどです。その際、筆者はお客様に「ペダリングは止めないでください!ペダリングは止めないでください!」とずっと語り掛けてます。そうすると、やっとペダリングを止めないで走り続けることが出来ます。
協力者がいればそう言い続けてもらうことも可能ですが、一人で挑戦する場合は自分でやると効果的です。そう、口に出して自己暗示をかけます。
「ペダリングを止めない、ペダリングを止めない、ペダリングを止めない……」
というように唱え続けます。
ホイールを見てしまう方は「前を向く」と唱え続けたり、身体に力が入ってしまう方は「リラックス」と唱え続けると良いです。
もしフラついたとしても、唱え続けてください。きっとフラついた瞬間、声が大きくなると思いますが、声に出し続けることで、出来ないことが出来るようになります。逆に声を出さないと、一緒に止めてしまうかもしれません。
実際、この方法を普段全くスポーツバイクに乗らない弊社の製造の方に試して頂いたところ、「前を向く、漕ぎ続ける」と繰り返し口に出すことで、安定して3本ローラーに乗る事が出来ました。頭で考えるだけでは、実際は身体が動かない行かない可能性がありますので、是非口に出して唱えましょう。自分は出来ると思い込むことが重要です。
3つのコツがどうしても同時に出来ない方は、騙されたと思ってやってみてください。効果が期待出来ます。もし効果がない場合は、騙されたということで諦めていただけますと幸いです。申し訳ございません。
3本ローラーから降りる
「乗るのがこんなに怖いんだから、きっと降りるももっと怖いんでしょう?」
そう思われるかもしれませんが、降りるのは簡単です。こちらは実走の感覚とほとんど同じです。
下記のことを、落ち着いて順番に行いましょう。
- ペダリングを止める
- ペダルから足を離して踏み台に向ける
- 自転車が自然に倒れるのを待つ
焦らず落ち着いてやれば問題ありません。
展示会等でも「降り方を教えてください!」と良く懇願されるのですが「実走と同じ感じで3つの流れをやってください」とお伝えしてやっていただくと「本当だ」と、みなさん拍子抜けします。
焦ってハンドルを切ったりしなければ大丈夫ですので、落ち着いてやりましょう。
以上が3本ローラーの乗り方でした。
「初めての方でも簡単!」とは言えません。一人で挑戦する場合は、結構苦戦されるかと思います。
しかし、ライディングスキルとしては簡単です。全くスポーツバイクに乗らない方でも乗れてしまうくらい、3本ローラーを乗る事自体にスキルはいりません。
そのため、ほとんどの場合3本ローラーに乗れないのはスキルがないからではありません。
問題は、「実走と違う」という心理的な”恐怖感”から簡単な動作すら出来なくなってしまうことにあります。逆に言えば、”恐怖感”を克服した後は、いとも簡単に乗れるようになります。
これから初めて3本ローラーに乗るという方、3本ローラーの乗り方をたくさん調べたけれどやっぱり乗れないという方、”恐怖感”をどう克服するかで、きっと乗れるようになると思います。