EQUALペダル調整記録~ペダリングの悩みは本当に解決できるのか~

ペダル

はじめに

皆様は、グロータックから発売しておりますEQUAL 多調整型ROADペダル(以降、EQUALペダル)をご存じでしょうか。EQUALペダルはQファクターやカント角、スタックハイトなど、様々な調整機構を搭載したビンディングペダルです。これらの調整機構を利用して、関節の痛みが出にくくなるようにしたり、自分にとってベストなポジションを追求したり、ビンディングペダルをより多くの方に楽しんでいただけるような製品となっております。

しかし、EQUALペダルにご興味をお持ちであったり、導入を検討されていたりしても、

「機能が多すぎて、結局どんな使い方をすれば良いのかわからない」
「自分に使いこなせるか不安」
「膝の痛みとかあるんだけど、本当に解決できるの?」

と、このような考えから二の足を踏まれている方が少なからずいらっしゃるかと思います。

そこで、EQUALペダルについての理解が深まり、また上手に使いこなせるようになるコンテンツを作成しました。EQUALペダルに興味を持ったり、お手に取っていただけるきっかけになれば幸いです。

第一回はEQUALペダルにおける最大の疑問、「ペダリングの悩みは本当に解決できるのか」に弊社スタッフ(筆者)真正面から向き合います。実際にEQUALペダルを使って、理想的なポジションに辿り着くまでの試行錯誤の記録を皆様に共有します。

※ 本稿における内容は、あくまでも一人の使用者による感想です。


Product Page

Concept and Data

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筆者が抱えるペダリングの悩み

私のペダリングにおける悩みは「できものができる」事、そして「ダンシングがギクシャクする」事の二つです。

できものができる

私は体質的にできものができやすく、そのできものが時としてペダリングの邪魔をする事があります。厳密に言うと、股の部分にできる粉瘤(ふんりゅう)だと思いますが、それがサドルに座った時に圧迫され、痛むようになります。腫れが酷くなるとサドルはおろか、椅子にさえ座っていられない程です。

一般的に言われる原因としては、サイクリングでは常にペダリングによる脚の回転運動が行われるため、必然的にサドルと接する股では絶えず摩擦が起こります。長時間乗っていれば摩擦も強まって肌が傷つき、できものができるのも納得です。このできものにはロードバイクに乗り始めてから度々悩まされており、できては治まり、忘れたころにまたできて…を繰り返してきました。対策として、これまでにはサドルを変えたり、ワセリンを塗ったりして、だましだまし乗ってきました。

ダンシングがギクシャクする

この悩みについては、特に痛みがある訳でありません。ただ、ダンシングの時に何となくバイクを振り回す動作がうまく出来ていないような、車体との一体感が薄いような感覚があるのです。勿論、これは私の技術や筋力の問題なのかもしれませんが、この感覚をQUALペダルのポジション調整によって払拭することができないか、と考えました。

前者の悩みに比べると、痛みを伴う訳ではないので重要性は低いですが、EQUALペダルのポジションの調整でバイクとの一体感を増す事ができれば、サイクリングをより一層楽しむ事が出来ます。なので、今回は、その可能性を追求していきます。

一つ問題なのは、この悩みはあくまでも「何となく」という程度の感覚に由来しているので、先述したとおり技術や筋力がそもそもの原因である場合、ポジションの調整では解決しません。そのため、もしかすると前者のできものに関する悩みよりも時間がかかったり、場合によっては解決を断念する見極めも必要です。

これらの悩みに対し、筆者はEQUALペダルをどのように調整していったのでしょうか。

悩みの解決に向けて

EQUALペダルのセットアップ

ではまず、EQUALペダルを実際に取り付けて、現在の自分にとっての適正ポジションに合わせます。
最初は調整機構は何も弄らずに、そこから少しずつ変更を加えながら、体の変化を見て、最終的なポジションを決めていきます。

これまで使っていたビンディングペダルからEQUALペダルに交換して、まず最初に気づいたのがスタックハイトの違いでした。スタックハイトとは、ペダル軸の中心からペダル踏み面の上端までの厚みです。EQUALペダルに限った話ではありませんが、ペダルを交換するときに見落としがちなのが、このスタックハイトの差によってサドルの高さが変わる事です。ここで生じた差は当然、サドルの高さなどを調整して補う必要があります。知らず知らずのうちに膝が痛くなったりした経験のある方はいらっしゃるのではないでしょうか。

因みに、EQUALペダルのスタックハイトは私が元々使っていたペダルよりも2mm程高くなっていました。これを調整するため、シートポストを2mm程伸ばします。なお。シートポストが伸びるとサドル・ハンドルの相対的に落差が増えたり、サドルが少し後退したりするので、厳密にはそれらの調整も必要になるのですが、今回は調整幅が軽微であった事から、それらの調整は行っていません。

ここまでで、本格的な調整を行う準備が整いました。

試行錯誤

EQUAペダルでペダリングの悩みを解決するには、ひたすらにトライ&エラーです。答えに辿り着くまで何度も仮説を立て、それを検証していきます。

「腿の内側が痛くなるから、Qファクターを狭めてみよう」
「サドルを下げる代わりにペダルのスタックハイトを上げたらどうなるんだろう」

と言ったように、現状に対して解決できると考えた調整を加え、その状態で試し乗りしては再度調整。場合によっては何度も繰り返す作業になり大変ですが、こればかりは地道にやるしかありません。更に大変なのは、ペダリングの悩みは数値化できないものも多く、乗り手の筋力やその日の体のコンディションにも影響されるため、場合によっては数日かけて最終的なポジションを決める事になるかもしれません。

ペダリングの悩み①できもの

なぜ右脚にばかりできる?

さて、ペダルのセットアップができたところで、私が抱える悩みと向き合っていきます。先述したできものは、具体的には股の右脚側にしばしば発生します。できものができる原因は一概には言えないものの、ペダリング時に脚とサドルの間で発生する摩擦によって皮膚が傷つき、そこから細菌が侵入しているためではないかと考えています。

通常の対策として考えられるのはサドルを低くしたり、サドルそのものを交換する事ですが、前者はペダリング効率や筋肉の使い方が変わってしまうデメリットがあります。私もサドルを下げてみた事はありますが、既に低めのシートポジションだった事もあってか、この方法では解決できませんでした。そして後者に関しては言わずもがな、新しいサドルを購入する費用が必要になります。市場にある無数のサドルから自分のお尻の形に合い、尚且つできものも発生しない、理想的なサドルを探す事になり、所謂「サドル沼」にはまってしまう可能性もあるでしょう。

さて、このような事情において、EQUALペダルの調整をどのように行い、痛みの解消に導いていったのでしょうか。ペダルの調整を行うにあたって私がまず注目したのは、できものが股の右脚側に集中してでき左脚側にはあまりできないという点です。

仮説を立てる

この事から、「左右で脚の長さが違うのかもしれない」と一瞬考えたのですが、その線は無いだろうと判断しました。というのも、以前に整体に行ったときに担当の先生から「左右の脚長にズレはない」と言われた事を覚えており、それを思い出したからです。勿論、専門機関で検査をすれば、ミリ単位で脚長を確認する事が出来ればその真偽を確かめられますが、ひとまずは整体の先生を信じる事とし、単純な脚長差による問題ではない事に気づきました。では、何故右脚側にばかりできものができるのでしょうか。

そこで次に立てた仮説は、「サドルにまたがる時に、左脚側に寄っている癖があるのではないか」というものです。

私は手は右利きですが、脚は左利きです。例えばサッカーボールを蹴る時、右脚を軸にして左脚で蹴ります。これと同じようにペダリングにおいても、無意識に回しやすい利き脚の付け根をなるべくサドルから離すような癖があるのではないか考えました。意識の上ではサドルの中央に座り、脚を左右均等にペダリングするようにしていますが、実際のところは違うのかも知れません。左右の脚の利きの違いや筋肉量・柔軟性の差などもペダリングに影響する可能性はあるでしょう。その結果として、股の右脚側に比較的強い摩擦が掛かり、これが、できものの原因になっているのかも知れません。

フィッティングの実施

では上記の仮説をもとに、実走を行いながらEQUALペダルの調整を行っていきます。

まず最初に、Qファクターやカント角の調整で左右のペダルを敢えてアンバランスにしてみました。例えば右のペダルだけを+4mm外側にしたり、左ペダルに1度のスペーサーを内向きにしたりと色々試しましたが、いずれも違和感が酷くなってしまいました。

次に、「サドルの荷重が右寄りになっているとすれば、右ペダルのスタックハイトを上げてみてはどうか」と考ました。スペーサーには1mm、0.5度、1度と3種類がありますが、とりあえず1mmのスペーサーを1枚追加してみました。これで、右のペダルが左よりも1mmスペーサーが1枚多く入った状態になりました。この状態でしばらく実走して、テストします。

ボディとシャフトの間に1mmスペーサーを追加し、2枚にしました。

結論から言うと、このセッティングが自分にフィットしました。ワセリンを塗らずに100kmを超えるライドを何度か行ったものの、できものは発生しませんでした。左右のスタックハイトの違いは踏んだ瞬間すぐにわかりましたが、そこから痛みに繋がる事もなく、長年の悩みからようやく解放されたので、とても嬉しかったです。

因みに、ここで敢えて1mmスペーサーを更にもう1枚右のペダルに加えてみましたが、右脚のペダリングが詰まるような感覚になり、右膝が痛むようにもなってしまったので、逆効果でした。特に、少し負荷をかけて踏み込んでいると次第に痛むようになったので、すぐに元に戻してしまいました。恐らく、ペダルのスタックハイトが増した事でペダリング時の膝の屈曲が増し、股関節や膝の負担が増したのだと推察します。私は細かなポジションの変化には鈍感なタイプだと思っていたのですが、1mm単位の違いでも気付けるものなのだという気付きが得られたので、良い経験だったと思います。

ペダリングの悩み②ダンシング

さて次は、私が抱えるもう一つの悩み「ダンシング」です。

この悩みは先述のとおり「何となく」といった曖昧な感覚に由来しています。ポジションの調整に解決の糸口があると仮定した場合、そこにたどり着くためには明確なゴールの設定が必要です。ですので、私はそのゴールを「ダンシングでバイクのもたつきが減り、100km以上乗っても体の痛みが極力出ないような、一体感のあるポジション」であると設定しました。このように言語化するだけでも、おのずと道筋が見えてきます。

仮説を立てる

私はまず、Qファクターを広げる事を試しました。理由は、ペダルが車体から離れていた方が、てこの原理で軽い力でバイクを振る事ができるのではないかと考えたからです。他社のビンディングペダルを見ると、通常のモデルよりもQファクターを広げた仕様をラインナップに加えているメーカーがあり、実際に大柄な選手やパワーのある選手に好まれているようです。EQUALペダルに関しては、ペダル本体とスピンドルを組み替えるだけで簡単にQファクターを広げたり、逆に狭める事ができます。早速、Qファクターをニュートラルの52mmから56mmの位置に変更しました。これは、2つ穴タイプのオフロード用ビンディングペダルに多い長さです。

さて、実際にこの状態で走ってみると、予想通りQファクターを広げた事によって、ダンシングだけでなく、シッティングの時もパワーをかけやすくなりました。おそらくは、脚が広がった事によって、より広い部位の筋肉が使えるようになったのではないかと考えています。

Qファクターを広げた事で、ボディ部分がシャフトの根元から遠ざかっているのがおわかりでしょうか。

意外な発見でしたが、このQファクターが広がった事により、今度は内もも(内転筋)が痛むようになってしまいました。私は典型的な日本人型の体系で座骨も広くありませんから、56mmのQファクターは少し広すぎたのかも知れません。例えば1時間程度で終わるようなレースであれば、こういった攻めのポジションも効果的ではないかと思いますが、今回はそういった用途に限定していません。因みに、Qファクターを逆に狭めてみましたが、ダンシングの振りやすさに関しては効果を感じませんでした。なので、別の調整を試します。

次に、無意味だろうと思いつつEQUAL ペダルを前後方向へ移動させる調整も試しましたが、やはり予想通りでした。ダンシングとの親和性も感じられませんでしたし、私のポジションではニュートラル位置で軸を真上から踏み込めているので、その状態を崩したくありませんでした。しかし、例えばトライアスロンバイクやTTバイクを使っている場合など、前後方向の調整はとにかくパワーが求められる使い方であれば、面白いかもしれませんね。

辿り着いたポジション

結果として正解だったのは、ペダルのスペーサーを0.5度のカント角がついたもの交換する事でした。
そしてその際、そのカント角は内向き、つまり厚みがある方を外側に向けて、少し内股になる様に取り付ける事で理想のポジションとなったのです。

このカント角の使い方が、ダンシング中に下した脚を引き上げるときに役に立ったのです。ペダルを外に向かって踏むような意識が生まれるので、これがバイクを振り回すダンシングと相性が良いのです。

カント角スペーサーは厚い方・薄い方をどちらに向けるかで、EQUALペダルの踏み面に最大±4°の傾きをつける事ができます。がに股、内股を矯正したい人にもおすすめです。

遊びの大きいクリートを使うのも有効かと思いますが、更にこの0.5度の内向きを加える事で、ちぐはぐさの解消につながりました。自分の足がややX脚で、膝が内側に寄りやすいという特性も影響していると思います。

<注意>
カント角の調整を過度に行うと関節の痛みが生じるなど、故障の原因になります。調整の際は、プロのフィッターの方にご相談する事をお勧めします。

おわりに

私は、ペダリングにおいて以下の悩みを抱えていました。

  1. 股にできるできもの、およびその痛み
  2. ダンシングのギクシャクした感覚

これらの悩みに対して、EQUAL 多調整型ROADペダルの調整機構を使って解決する事が出来ました。
やはり、自分が抱えていた悩みから解放された状態でサイクリングができるというのは、格別の気分です。

EQUALペダルの最終的なセッティング

・前後方向の調整 → 初期位置
・回転方向の調整 → 初期位置
・Qファクター → 52mm(±0mm)
・スタックハイトスペーサー → 右:1mm、左:なし
・カント角スペーサー → 右:0.5度(内向き)、左:0.5度(内向き)

発見

また今回は様々な調整を試したことにより、新たな発見が沢山ありました。それはペダルを前に出したり、Qファクターを外に広げたりするポジション調整による効果だけでなく、自分自身の体についてなど様々です。中でも、ポジションの調整がこれほどに楽しい事に気づいたのが何よりの発見です。これほどまでに真剣に自転車と向き合ったのは久しぶりですし、サイクリングへのモチベーションも上がりました。こういったプロセスこそEQUALペダルの価値そのものではないかと私は考えています。

また、通常のビンディングペダルとは違い、クリートを動かさずとも様々な調整が試せるのが魅力的であると感じました。EQUALペダルの調整は「自分に合わないな」と感じた場合はすぐに元に戻せますから、再現性もあって安心です。

今後は更に、EQUALペダルの調整を更に積極的に行い、他のペダルではできない乗り方を楽しむ予定です。

アドバイス

今回の体験を通じて、私から皆さんに僭越ながらアドバイスさせていただきますと、EQUAペダルには様々な調整機構が付いていますが、一度にあれこれと複数の調整機構を弄るのではなく、なるべく1か所ずつ調整して様子を見ていくやり方がおすすめです。その方が変更したポジションに身体を馴染ませる上でも適しているような気がします。

また、自分に合ったポジションを調整するコツとしては、焦らずに少しずつ、時間をかけて試行回数を重ねると良いでしょう。そうする事で、どの調整機構をどの程度動かすと痛みが弱まったり、逆に痛みが生じてしまうのかを見極めやすくなります。

私はフィッティングの知識がないので、今回は全てが手探りの状況でした。しかし、それでも自分なりの答えをポジションに反映させる事が出来ています。勿論、知識のあるショップやフィッターさんの手にかかれば、より早く、より正確な答えを出す事ができるでしょうから、ご自身での作業に不安がある方は、そういった方々にも相談してみましょう。

最後に注意事項を一点。EQUALペダルの調整が終わりましたら、初期のスピンドル取り付けネジをクスリ(緩み止め剤)付きのものに交換しておいてくださいね。

出荷時に取り付けられているネジ(写真左)はポジション調整用です。本運用の際はクスリ付きのネジ(写真右)に付け替えてください。

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