The EQUAL Concept
In-Depth Interview
EQUAL Concept’s Vision of an Ideal World
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In addition to its rollers, Growtac has gradually expanded its lineup to include brake calipers, pedals, hubs & wheels, and control levers. But what kind of history does this manufacturer have? What does the product name “EQUAL” mean? What is their next move? And what vision does the “EQUAL Concept” aim for? An in-depth interview with Growtac’s CEO, Mr. Kimura.

The Birth of GROWTAC
Let’s take it step by step. First, please tell us what led you, Mr. Kimura, to start GROWTAC.
Kimura: I started GROWTAC while I was still a company employee, around 2009. I was part of Narishima Friend and raced in corporate teams while making small bike parts on the side.
Was the first product the Adjuster Pin and the EQUAL Pulley?
Kimura: That’s right. I also made the Cleat Spacer, the GT-OIL, and meter lights. At the time, there were no meters with backlights. Back then, there simply weren’t as many convenient parts available. I was commuting 100km every day, so if there wasn’t something useful, it would be a problem for me. That’s why I started making things myself and selling them little by little.
――当時はとある大企業で技術者をやられていたとのことですが、元々「もの作りの心得」があったんですか?
木村:うちの家系がものを作るのが好きだったんですよね。父は普通のサラリーマンでしたが、家を自分で全部リフォームしたり。そういう環境にいたので、幼稚園の頃からおもちゃは自分で作ってました。だからずっと手が怪我だらけ(笑)。オリジナルラジコンも2足歩行ロボットも作りましたね。今みたいにネットがないから調べるのが大変。通販もない時代だから部品買いに行くのも一苦労でした。
――グロータック創業当初はサラリーマンをやりながらの兼業とのことですが、会社のヴィジョンみたいなものはあったんですか?
木村:それがあったんですよ(笑)。
ヴィジョンは「自転車200年の歴史に新しいスタンダードを!!」というものです。
創業から現在まで一貫してこのヴィジョンを活動の中心に置いています。
・「200年の歴史」= 過去、未来、現在において正しい会社であること
・「新しい」= お客様に新しい価値を提供しなければいけない
・「スタンダード」= お客様に認められる製品でなくてはいけない
分かりやすく言うと、「お客さまにとって価値があり、新しく、正しいものを作る」「独りよがりではなく、お客さんに認められる製品を作る」です。
ローラーを始め、世界初だったり、ヘンテコな商品が多いですが、ほとんどの製品が新しい価値へのチャレンジです。
EQUALコンセプトも新しい価値の提案です。
今後、「自分だけの自由な自転車を作る」「自分の自転車に誇りが持てる」ようなお客さんが増えればいいなと。
――なるほど。現在はグロータック一本で仕事をされています。独立したきっかけは?
木村:いろんな事情でローラー台で練習せざるを得なくなったときに、いいローラー台がなかったので、自分でGTローラーを作ったんです。
――フォークマウントの固定ローラーながら、左右に揺れる構造でリアルな実走感を実現したローラー台でした。ただ左右に揺れるだけじゃなくて、実走状態に近いロール軸にして。
木村:はい。それがいい評判をいただいたので、本格的に作り始めて脱サラして株式会社にしたのが2014年です。
――そのせいか、今でもグロータックはローラー台メーカーと思ってる人もいますね。「独自のローラー台で有名な~」と紹介されることも多いです。

EQUALの正体と意味
――2014年に脱サラしてグロータック一本でやってこられたわけですが、最近は「EQUAL(イコール)」という一連のパーツ群がメインになってます。そもそも、「EQUAL」とはなんですか?その由来は?
木村:EQUALは、イコールプーリーからとったんです。
――カンパニョーロのエルゴレバーの純正プーリ―を外してイコールプーリーと交換すると、カンパのレバーでシマノの駆動系が動かせるという。マニアからは「神パーツだ!」と言われ、純正至上主義の某コンポメーカーからは大いに煙たがられたであろう変態パーツですね。
木村:グロータックというメーカーのパーツブランドがEQUALなんですが、EQUALブランドのコンセプトは、イコールプーリーのときから変わっていません。

――ではその「EQUALコンセプト」について詳しく。
木村:実業団選手として競技生活を送っていると、コンポがモデルチェンジをして変速段数がどんどん増えて、ホイールが使えなくなったりして、不自由を強いられるわけです。サポート体制の関係でコンポが変わると今までの資産が使えなくなるし。
――資金が豊富にあればいいんでしょうけど、限られた予算の中でやり繰りする一般ユーザーにとっては厳しいですよね。「次からコンポは○速になります。ホイール含め互換性はありません。どうぞ全部買い替えてください」みたいな。
木村:そう。なんでメーカーの都合でユーザーがこんな苦労をしなければいけないんだ、と。全然ユーザーフレンドリーじゃない。古い話になりますが、Wレバーの頃はどんなディレーラーでもどんな変速段数でも使えたし、いろんなコンポを混ぜてもよかった。楽しかったし、自由だった。それが今は、メーカーや互換性に縛りができ、選択肢が少なくなって、自由度がどんどんなくなってます。そんな不満を感じ始めたとき、カンパが11速化でレバーが新設計になったんです。ものを見てみると、簡単にプーリーが外せそう。そこでイコールプーリーを作ったんです。
――メーカーに縛られずに、もっと自由に楽しく。それがイコールプーリーだったと。
木村:そうです。そのときの思いは、「ユーザー一人ひとりが自分の好きなパーツを使ってバイクを作ればいいじゃん」というものでした。EQUALというのは数式の「=」で、自分の想いと機材が=(イコール)になるように、という想いを込めたものです。ユーザーからしてみればメーカーの都合なんて関係ありませんから。
――メーカー間のシェア争いなんていちユーザーにとっては知ったこっちゃないですからね。
木村:そうなんですよ。メーカーが規格をどんどん変える。機材の進化やライバルとの競争という側面では理解できますし、普通のことなのかもしれません。しかし、新旧の選択の余地がない……そんなやり方をしていたらいつか誰も付いてこなくなってしまう。サイクリストは奴隷じゃないので。そういうやり方がすごく問題だなと思い、「グロータックとしてEQUALコンセプトを推し進めないといけない」と強く思いました。スポーツバイクはあくまで趣味ですからね。スポーツバイク界は、メーカー中心ではなく、お客さん中心に回らないといけない。それには、メーカーや業界の利益優先的な思惑に振り回されずに、もっとフラットに楽しむためのパーツが必要だと。
――イコールプーリーのときは商品名でしたが、そのイコールプーリーがEQUALコンセプト、そしてEQUALブランドに繋がっていったわけですね。
木村:そうです。EQUALブランドの2つめの製品は機械式のDISCブレーキキャリパーです。本当はコントロールレバーが先に出るはずだったんですが、開発にかなり時間がかかったので、キャリパーが先になりました。タイミングよくロードのディスク化と重なったこともあって、かなり好評をいただいてます。

「グレードは作りません」
――EQUALがグロータックというメーカーの中のブランドになり、ブレーキキャリパー、ペダル、ホイールやハブなどの脚周り、コントロールレバーと立て続けに発売。いちパーツメーカーというよりはコンポメーカーになりつつあるグロータック/EQUALですが、コンポにはグレードがあるものですよね。デュラエースとか105とかスーパーレコードとかコーラスとか。でもEQUALにはまだグレードがありません。今後はグレードも作っていく予定ですか?
木村:いや、EQUALにはグレードは設けません。目的別に作り分けた結果として価格の高い/安いは出てくるかもしれないけど・・
――そうなんですか?ビジネスを考えたらグレードで作り分けたほうが……。
木村:従来のコンポには必ずグレードがありましたが、それだとどうしてもマウント合戦になるでしょう。「君105なの?」「あぁコーラスなんだ」みたいな。低いグレードを使う人がプライドを持てなくなる。グレードを設けること自体がユーザーをバカにしてる。だからEQUALにグレードは作りません。商売を考えるとグレードをいくつも設けて「いつかはクラウン」的な階級を作ったほうがいいのかもしれませんし、それが間違ってるとは言いませんが、EQUALはそうはしません。例えばブレーキキャリパーで「レース用」「ツーリング/グラベル用」みたいな目的別で2種類の製品が出るかもしれませんが、両方、目的別フラッグシップです。上も下もありません。
――選択の自由度がないうえにグレードで差別される。言われてみれば確かにそうかも。
木村:今、EQUALの機械式キャリパーを使っている人って、すごくプライドを持って使ってくれてます。低グレードの部品のような「これしか買えなかった」ではなく、「あえてこれを選んだ」って方がほとんどだと思うんです。でも、「俺はティアグラが好きであえてこれを選んでるんだ」って言っても、負け惜しみに聞こえてしまうかもしれませんよね。もし本当だったとしても。
それはメーカーやメディアがお客さんをそう教育してきたからです。そういう世界はよくないですよ。EQUALの製品が出ることによって、メーカーやグレードに縛られたりしなくなります。これからも、「値段じゃなくて機能で選んだ。価値で選んだ。」って言えるようなパーツを作っていく。使うことに誇りを持てるようなパーツを作っていきます。
――出てくる製品だけみると「オモシロパーツメーカー」と思ってしまうかもしれませんが、実はそういうヴィジョンがあるんですね。
木村:実はEQUALでやりたいのは「自転車の民主化」なんです。大手メーカーの多くが掲げるのはハイスペック至上主義であり、スペックマウントによる「階級社会」です。でもEQUALは自分の価値観とか愉しさを優先した民主主義。自転車の民主主義化を進めるためには、グレードを廃止して用途で決めるというコンポの在り方が大事だなと。全部が全部そういう製品になればいいとは思いませんが、今はそういう選択肢がすさまじく少ないですから。
――民主化ということは、現在のようなメーカー主導ではなく、ユーザーの意見とか楽しみ方が反映されるようなあり方にすると。
木村:そうですね。権利をユーザーとお店に戻したい。それに、フレームメーカーってむちゃくちゃたくさんありますよね。ホイールもハンドルもステムのメーカーもいっぱいある。でもコンポだけが極端に少ないんですよ。スポーツバイクの根幹となるコンポなのに、プレイヤーが少なすぎます。もしかしたら世界中のサイクリストは、2大3大コンポメーカーの中の数人に操られてるかもしれない。そんな状況は気持ち悪くてしょうがない(笑)。少ないうえに階級社会的なコンポーネントメーカーしかない中で、EQUALのような民主主義的な考え方のメーカーが一つでもあれば、今の価値観が肌に合わずになんとなく不満に思ってる人達の為になるんじゃないかと。そういう人達にEQUALを選んでいただければいいですね。
――昨今の「問答無用な規格変更、現状変更」に違和感を覚えてる人達は多いでしょうね。
例えば、12速化・電動化・ディスク化・油圧化……。
木村:そうだと思います。どんどんユーザーの「選択の権利」や「機材を長く大切に使う権利」が奪われてる。かといってEQUALだけが正しいんだって言ってるわけじゃないんです。イメージとしてはこんな感じ(下図)。多様で広いお客さんのニーズのうち、大手メーカーは真ん中の大きな面積のところをカバーしてる。スポーツサイクルを支える大事な役割があります。しかし、僕のようなひねくれたユーザーのニーズは端っこのほうだから全然フォローされない。そういう人たちがEQUALを選んでもらえればいい。大きなビジネスを狙っているわけではないので、四隅の一部だけ(笑)。

――エアロとか電動の油圧ディスクコンポが不必要だって言ってるわけではないんですよね。ロードバイクの進化の一つの方向性としては正しいし、それらを必要としてる人もいる。
木村:そうです。その通り。エアロだって油圧ディスクだって一体型ハンドルだって、それに価値を感じる人には必要な機材です。でも、必要ない人には全く必要ないものです。今はユーザーとショップに主権がなく、メーカー主導で、自分で考える余地がなくなって、どんどんお金を使ってしまう。だってトップグレードのエアロで軽量なバイクを作るのにかかった開発費は、エントリー~ミドルグレードの価格にも反映されて「みんなで分担しましょう」ですからね。ケーブルフル内装になってスマートになって空気抵抗減ってよかったね、ということになってますが、そういう性能に価値を感じない人は、ポジションが出しにくくなって、メンテナンスに時間がかかり、無駄な工賃を払わされてるだけでなく、無駄に高くなったものを買わされてるわけです。「機材を選ぶ権利を奪われてるうえにトップグレードに搾取されてる」と思ったほうがいいですよ。

EQUALの使命
――「民主化で階級を作らない」みたいなコンセプトを聞くと、性能では勝負しないようなイメージを持たれるかもしれませんが、グロータックは性能にはめちゃくちゃこだわってますよね。
木村:当然です。性能は重視します。スポーツバイクはあくまで負荷をかけてスピードを出して走るために作られたものであり、それを楽しむには性能が必須ですから。いくらコンセプトに共感できたとしても、使い心地や性能が悪ければ使う気になれないし、プライドも持てないでしょう。だから、「互換性があるから重いです」とか「何でもできるかわりに使いにくいです」は最小にすべきです。僕は競技の世界で育ってきましたし、EQUALはスポーツバイクという土台の上に載っているので、スペックは気にするし、性能や使い心地も犠牲にしたくありません。EQUALキャリパーだって、「機械式だから引きが重くて効かないです」から脱したかったんです。
――では、EQUALというコンポーネントの今後は?
木村:今後もぶれなく同じコンセプトを貫きます。今はまだ製品数が少ないですが、コンセプトに沿ったパーツを揃えます。
――ということは、次のパーツは……?
木村:ディレーラーをやらないといけないなと。本当はディレーラーには手を出さない予定だったんです。いろんなメーカーがいろんなものを作ってますから。「そっちを選んでもらったほうがいいんじゃないか」と思っていたら、「機械式のディレーラーは作るのやめます」という話になってきたので、こりゃ我々が作らなきゃいかんと。というわけで、1つのリヤディレーラーでどんなギヤ比でもどんな段数でも動くようなものを考えてます。そんなディレーラーを作れば、もっと好みの自転車を組みやすくなります。もう一つは新世代の機械式変速システム。EQUALコントロールレバーをベースにして、専用のリヤディレーラーを用意して、それを次の時代の機械式変速の在り方として提案したい。電動が増えてきた昨今ですが、機械式が好きな人はたくさんいます。ならば機械式もアップデートしないといけません。今のままだとスポーツバイクの機械式変速が絶滅しちゃいますから。
――まだまだ変なこと考えてんですね(笑)。
木村:今のコンポメーカーが電動化・油圧ディスク化に揃って舵を切る流れを考えると、我々の「機材を選ぶ権利」「気に入った機材を長く使う権利」がさらに少なくなることは間違いありません。それ以外の選択としてのコンポを作っていきます。それに、そういうパーツを作り続けていれば、EQUALコンポを使って自分らしさを表現した自転車を組んでいるユーザーさんたちを見て、大手メーカーが「こういう人達がいるんだ」「我々の思い通りになる人達ばっかりじゃないんだ」ということに気付いてくれて、そこに目を向けてくれるかもしれない。
――……なるほど。
木村:「この人達、楽しそうに自転車乗ってるけど、ウチのパーツ一個も付いてないじゃん」みたいな。EQUALの製品は自由度が大きいだけに、お客さんに選択や調整など面倒なことを押し付けるものになるかもしれませんが、今のように3大コンポメーカーが主導する世界にはしたくない。そのためには誰かが何かを提供して選択できる余地を残す必要があります。だから使命感もあるんです。
そうして世界的に自転車の楽しみが多様になって、一人ひとりが尊重される世界になれば最高じゃないですか。
